ターミナルスタンスで下腿が外旋する|「どこで」起きているかを分ける

ターミナルスタンス(TSt)で、つま先が外を向いている。

カルテに「下腿外旋」と書いて、そこで手が止まる。よくある場面だと思います。

これは所見であって、原因の場所ではありません。

この記事では、その外旋がどこで起きているのかを分けて考える手順を整理します。内側型膝OAの高齢者を例にしますが、考え方は他の症例にも使えます。

対象読者: 臨床2〜5年目の理学療法士、実習中の学生


「つま先が外を向いている」だけでは、何も決まらない

架空の例を置きます。

70代女性。両側の内側型変形性膝関節症。立位で軽度の内反。歩行は自立しているが、TStで右のつま先が明らかに外を向く。本人は「昔からこの歩き方」と言う。

ここで「足部外転がある。つまり下腿外旋」と書いてしまうと、次に何を触ればいいのかが決まりません。

足部が外を向く経路は、少なくとも3つあります。

  1. 股関節から下肢全体が外旋している
  2. 膝で、大腿骨に対して脛骨が外旋している
  3. 足部そのものが外転している(中足部・前足部レベル)

それぞれ、介入する場所が違います。


「下腿外旋」は2つのことを指している

まず言葉を分けます。この用語は、臨床で2つの異なる現象に使われています。

① 空間に対する下腿の向き

下肢全体が、進行方向に対して外を向いている状態です。

股関節で外旋していれば、大腿も下腿も足部も、まとめて外を向きます。膝関節の中では、何も起きていません。

② 大腿骨に対する脛骨の外旋

膝関節内での回旋です。大腿骨は正面を向いたまま、脛骨だけがねじれています。

この2つは、同じ「下腿外旋」という言葉で呼ばれます。 しかし中身は別物です。

【図:①下肢全体の外旋と、②膝関節内での脛骨外旋の違いを、上から見た模式図で対比】

なぜ分けるのか

触る場所が変わるからです。

どちらか 見に行く場所
① 下肢全体の外旋 股関節(伸展・内旋の可動域、前捻角、殿筋群)
② 膝での脛骨外旋 膝(屈曲拘縮、外側構造の緊張、膝窩筋)

①だと思って股関節にアプローチしても、実際が②なら変わりません。逆も同じです。

そして③の足部外転が加わると、見た目はさらに似てきます。外から見える「つま先の向き」は、3つの入口の合計です。


観察で分ける:膝蓋骨とつま先の組み合わせ

最も簡単な切り分けは、膝蓋骨がどこを向いているかを同時に見ることです。

つま先だけを見ていると、この3つが区別できません。

膝蓋骨 つま先 どこで外旋しているか
正面 膝より遠位(膝の回旋、脛骨外捻、足部外転)
股関節から(下肢全体が外旋)
股関節内旋+膝外旋(途中でねじれている)

【図:3パターンの前額面イメージ。膝蓋骨とつま先の向きを矢印で示す】

最下段は、内側型膝OAで見かける形です。股関節は内旋しているのに、足部は外を向いている。 どこかで向きが反転しているので、ねじれの発生源が膝または下腿にあることが示唆されます。

【注意】 膝蓋骨の向きは、膝蓋骨そのものの位置異常や大腿四頭筋の付着の影響も受けます。あくまで当たりをつけるための所見として使ってください。

なぜTStで見るのか

TStは、回旋の代償が最も表に出やすい相だからです。

  • 股関節伸展が最大になる
  • 膝が伸展位に近づく(回旋の余地が最も小さい)
  • 前足部への荷重に移る(足部の剛性が要求される)

矢状面の要求が最も高くなる瞬間です。その要求が満たせないとき、水平面の代償が出ます。


部位別に仮説を立てる

ここからは、部位ごとに「何が起きていると、外旋が出るか」を並べます。すべて仮説であり、確定診断ではありません。

股関節

伸展制限

TStには一定の股関節伸展が必要です。これが不足すると、同じ歩幅を出すために別の方法が要ります。

下肢を外旋させると、下肢の矢状面が進行方向からずれます。 見かけ上の前後移動を、少ない股関節伸展で稼げることになります。

内旋制限

ここは見落とされやすい部分です。

TStでは、遊脚側の骨盤が前に出ます。つまり骨盤は立脚側へ回旋します。 立脚側の大腿骨は床に固定されているので、立脚側の股関節は内旋方向に動くことになります。

内旋可動域が不足していれば、骨盤はその範囲でしか回れません。あらかじめ下肢を外旋位にしておくと、内旋方向に使える余地が増えます。

この構図は、ゴルフのスイングでも同じです。骨盤は、支持脚の股関節が許容する範囲でしか回りません。

→「【保存版】ゴルフ選手のアスレティックリハビリ完全ガイド|怪我からコース復帰まで段階的に解説

前捻角

大腿骨前捻角が小さい(あるいは後捻)場合、股関節は外旋位で使われやすくなります。構造要因なので、運動療法では変わりません。

中殿筋・小殿筋

中殿筋・小殿筋の前部線維は内旋にも働きます。前部線維の機能低下があれば、内旋方向の制御が落ちる可能性があります。

屈曲拘縮とscrew-home

前提を1つ確認します。膝が終末伸展に向かうとき、脛骨は大腿骨に対して外旋します(screw-home movement)。

つまり、TStで脛骨が多少外旋しているのは、そもそも正常です。

問題はここからです。屈曲拘縮があると、終末伸展に到達しません。 screw-homeが完了しないので、この機序による外旋はむしろ減るはずです。

屈曲拘縮があるのに強い外旋が見えるなら、screw-home以外の原因を探すことになります。この切り分けは実務で使えます。

外側構造の優位

大腿二頭筋は腓骨頭に、腸脛靭帯はGerdy結節に付着します。どちらも脛骨を外旋させる方向に働きます。

一方、膝窩筋は脛骨を内旋させ、screw-homeを解除する筋です。外側構造が優位で膝窩筋の働きが乏しければ、脛骨は外旋位に落ち着きやすいと考えられます。

【要文献確認】 内側型膝OAにおいて脛骨が大腿骨に対して外旋位をとりやすいか、という点について、私が確認できた範囲では明確な文献に行き当たっていません。内側関節裂隙の狭小化から想定はできますが、ここは仮説として扱ってください。

足部・足関節

背屈制限

TStでは下腿が前傾し、足関節は背屈します。これが不足すると、足部を外転させて「回り込む」代償が出ます。

足関節の上を通過できない分を、内側縁から抜けることで稼ぐ形です。

背屈制限の切り分けは、別記事にまとめています。

→「足関節背屈制限|制限因子の見分け方と距骨外旋による代償

第1MTP関節の伸展制限

TStから前遊脚にかけて、第1MTP関節は大きく伸展します。ここが制限されると(functional hallux limitusを含む)、母趾の上を越えられません。

結果として、足部を外転させて内側縁から抜ける動きになります。背屈制限とよく似た見え方をします。

過回内

中足部での回内が大きければ、前足部は外転方向を向きます。足部の中で外転が完結している形です。

下腿三頭筋

短縮があれば背屈が制限されます。上記の背屈制限と同じ経路です。

腰椎

伸展の回避

TStの股関節伸展には、骨盤・腰椎の動きが伴います。腰椎すべり症などで伸展方向が症状を出す場合、そこを避ける歩き方になります。

結果として股関節伸展が減り、水平面の代償が出る可能性があります。

L5/S1の神経症状

L5・S1領域の神経症状があれば、大殿筋・ハムストリングス・下腿三頭筋の出力に影響します。TStの推進に関わる筋がまとめて含まれます。

しびれや感覚障害の分布、SLRなどの所見を合わせて確認します。

構造的要因:脛骨外捻

脛骨そのものがねじれている場合があります。

運動療法で変えられません。だからこそ、先に外しておく必要があります。

構造要因を見逃したまま可動域や筋力にアプローチし続けると、変わらない対象を追いかけ続けることになります。

【要文献確認】 脛骨外捻角の正常値と、加齢や膝OAによる変化について、具体的な数値を挙げる場合は出典の確認が必要です。


その外旋は「答え」かもしれない

ここまで「外旋がどこで起きているか」を見てきました。ここで方向を変えます。

その外旋は、問題ではなく解決策である可能性があります。

toe-outと後期立脚の膝内転モーメント

Rutherfordら(2008)は、無症候者50名、軽〜中等度の膝OA 46名、重度の膝OA 44名を対象に、足部の進行角(foot progression angle)と後期立脚の膝内転モーメントの関係を検討しました。

FPAと膝内転モーメント波形の関連
無症候者 あり(P<0.05)
軽〜中等度OA あり(P<0.05)
重度OA なし(P>0.05)

つまり、つま先を外へ向ける歩き方は、後期立脚の内側コンパートメント荷重に関与しうるということです。

介入研究もあります。HuntとTakacs(2014)は、内側型膝OAの15名に対し、自己選択のtoe-out角を10°増やす10週間のプログラムを実施しました。

結果
toe-out角 有意に増加(P<0.001)
WOMAC疼痛 有意に減少(P=0.02)
NRS疼痛 有意に減少(P<0.001)
後期立脚の膝内転モーメント 有意に減少(P=0.04)

外旋は、痛みを減らす方向に働いていた可能性があります。

ただし、2つの但し書きがあります

① 重度例では関係が見られませんでした

Rutherfordらの研究で、重度OA群ではFPAとの関連が出ていません。この群では歩行速度だけが有意でした。

重度例のtoe-outを見たときに、内転モーメント軽減という説明を当てはめられるとは限りません。

② 意図的に増やすと、別の部位に負担が出ます

Huntらの研究では、15名中5名(33%)が股関節または膝に不快感を訴えています(いずれも2週間以内に消失)。

対象15名のパイロット研究であることも含め、「toe-outを増やせばよい」と単純化はできません。

だから、正す前に問う

外旋を見つけたとき、反射的に「修正すべき異常」と扱う前に、それが何のために出ているのかを考える必要があります。

正した結果、内側の荷重が増える可能性があります。


よくある考察の落とし穴

実習レポートや症例検討でよく見る組み立てがあります。

「内側ハムストリングの筋力低下により、下腿外旋が生じている」

この説明には、検討すべき点が3つあります。

① 活動している時期が合っていない

半腱様筋・半膜様筋が歩行中に活動するのは、主に遊脚終期から立脚初期です。減速と接地の準備のためです。

TStの時点では、この活動は大きく落ちています。

TStで観察された現象を、その相でほとんど働いていない筋の筋力低下で説明するのは、時期の面で無理があります。

② 膝伸展位では、回旋できる余地が小さい

TStの膝は伸展位に近づいています。伸展位では脛骨大腿関節の回旋可動域そのものが小さくなります。

回旋の余地が小さい肢位で、内側ハムストリングの筋力低下が回旋角度を左右できるか。ここも検討が必要です。

③ 内側型OAでは、筋活動はむしろ増える方向の報告がある

膝OAでは、膝周囲筋の活動戦略が変化することが報告されています(Ghazwanら, 2022)。

【要文献確認】 「内側型膝OAでは内側ハムストリングを含む同時収縮が増加する」という具体的な方向性について、私が内容まで確認できた文献はまだありません。同時収縮の増加という現象は報告されていますが、どの筋が、どの相で、どう変わるかは出典の確認が必要です。

ただし少なくとも、「内側ハムストリングが働いていないから外旋する」という前提が自明ではないことは言えます。

では、どう書くか

否定したいわけではありません。説明の順序を逆にすればよいと考えています。

書き方 問題
「内側ハムの筋力低下 → 下腿外旋」 機序が先にあり、所見が後付けになる
「TStで外旋している。可能性は複数ある。以下で絞る」 観察が先。仮説は並列

仮説を絞る評価の流れ

最後に、切り分けの順序です。

見るもの 何が分かるか
静止立位 vs 歩行時 静止でも外旋している → 構造的要因やアライメントの可能性。歩行時のみ → 動的な代償の可能性
他動ROM 股関節伸展・内旋、膝伸展、足関節背屈、第1MTP伸展。制限の場所が絞れる
OKCとCKCの差 非荷重で出る可動域が荷重下で出ないなら、制御や剛性の問題
筋力 中殿筋(特に前部線維)、大殿筋、下腿三頭筋
神経所見 L5/S1の感覚・筋力分布、SLR。腰椎由来を外す
歩行距離による変化 歩くほど外旋が増える → 疲労性・持久性の問題。最初から一定 → 構造的要因を疑う

【図:評価の流れを、静止 → ROM → 筋力 → 神経 → 距離負荷の順にフローで示す】

最下段は、外来で使いやすい方法です。 初めの数歩と、数十メートル歩いた後を比べます。変化するものと、しないものが分かれます。

そして繰り返しになりますが、絞ったうえで「正すべきか」をもう一度問います。


まとめ

論点 内容
前提 「下腿外旋」は2つの現象を指す。下肢全体の外旋と、膝での脛骨外旋
観察 膝蓋骨とつま先の組み合わせで3パターンに分ける
なぜTStか 矢状面の要求が最大になり、満たせないと水平面の代償が出る
股関節 伸展制限、内旋制限(TStでは立脚側が内旋する)、前捻角、殿筋前部線維
screw-homeによる外旋は正常。屈曲拘縮があるなら別の原因を探す
足部 背屈制限、第1MTP伸展制限、過回内。いずれも「回り込む」代償
構造 脛骨外捻。変えられないので先に外す
視点の転換 その外旋は内転モーメントを下げている可能性がある(Rutherford 2008)
但し書き 重度例では関連が見られない。 意図的に増やすと33%で別部位に不快感(Hunt 2014)
落とし穴 「内側ハムの筋力低下→外旋」は、活動時期と肢位の面で検討が要る

所見に名前をつけただけで、考察が終わってしまうことがあります。

「下腿外旋」と書いた次の行に、「どこで」を書けるかどうか。 そこが分かれ目だと考えています。


参考文献

  • Rutherford DJ, Hubley-Kozey CL, Deluzio KJ, Stanish WD, Dunbar M. Foot progression angle and the knee adduction moment: a cross-sectional investigation in knee osteoarthritis. Osteoarthritis and Cartilage. 2008;16(8):883-9.
  • Hunt MA, Takacs J. Effects of a 10-week toe-out gait modification intervention in people with medial knee osteoarthritis: a pilot, feasibility study. Osteoarthritis and Cartilage. 2014;22(7):904-11.
  • Ghazwan A, Wilson C, Holt CA, Whatling GM. Knee osteoarthritis alters peri-articular knee muscle strategies during gait. PLoS One. 2022;17(1):e0262798.

注意事項

本記事は歩行観察と臨床推論の考え方を整理したものであり、個別の症例に対する診断・治療を保証するものではありません。

記事中の症例は、特定の個人を示さない架空の設定です。

記載した機序の多くは仮説であり、確定したものではありません。実際の評価と治療にあたっては、専門医および理学療法士等と十分に相談のうえ行ってください。

なお、本記事の内容に基づく自己判断により生じた事故や健康被害について、当方は一切の責任を負いかねます。


関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました