ジョーンズ骨折は、戻ること自体は難しくありません。
難しいのは、戻ったあとに再骨折させないことです。
この記事は、そこを「外側荷重をどう戻すか」という一点で整理したものです。
対象読者: スポーツ現場・整形外科クリニックで競技者を担当する理学療法士、アスレティックトレーナー
結論
先に書きます。
- 母指球に荷重させたいなら、先に第1列が下りる能力を作ります。 長腓骨筋のエクササイズをCKCの前に置きます
- 着地戦略は股関節・膝で吸収する形から、スティフランディングへ移します
- 左右のジャンプは最後です。 受傷機序そのものだからです
まず数字を押さえる
Attiaら(2021、AJSM)のシステマティックレビュー・メタアナリシスです。競技者に限定した22研究、646例のジョーンズ骨折。
| 項目 | 手術(髄内スクリュー) | 保存 |
|---|---|---|
| 競技復帰率 | 98.8% | 71.6% |
| 復帰までの期間 | 9.6週 | 13.1週 |
| 癒合率 | 97.3% | 71.4% |
全体の復帰率は98.4%、復帰までは9.6週、癒合までは9.1週でした。手術と保存を直接比較した3研究では、手術が有意に優れていました(オッズ比0.033、95%CI 0.005〜0.215、P<.001)。
競技者で手術が選ばれる理由が、この数字です。
そして実務上は、復帰まで9〜10週というのがリハビリの時間軸になります。
【注意】 術式・固定方法・荷重の許可時期は主治医の指示が最優先です。本記事は運動療法の組み立て方を扱うもので、プロトコルを置き換えるものではありません。
「第5中足骨の骨折」をひとまとめにしない
進める前に、区別しておく必要があります。近位部の骨折は、部位によって予後がまったく違います。
| 区分 | 部位 | 性質 |
|---|---|---|
| Zone 1(結節部裂離) | 第5中足骨の結節 | 血行がよく、保存で癒合しやすい |
| Zone 2(真のジョーンズ骨折) | 結節のすぐ遠位、第4-5中足骨間関節部 | 血行の分水嶺。遷延癒合・再骨折が多い |
| Zone 3(近位骨幹部の疲労骨折) | さらに遠位 | 反復ストレスによる。同様に治りにくい |
この記事が扱うのはZone 2とZone 3です。 Zone 1の裂離骨折に同じ考え方を当てないでください。
なぜ治りにくいのか。この部位は栄養血管の届きにくい領域で、かつ受ける応力が剪断と牽引だからです。 牽引は骨折線を開く方向に働きます。
このあたりは疲労骨折の記事で整理しています。
原因は外側荷重です
第5中足骨は、足部の外側柱の末端にあります。
荷重が外側に偏り続ければ、そこに剪断と牽引が集中します。安静で骨がついても、荷重の位置が元のままなら、応力の分布は元のままです。
ここが再骨折の構図です。
減らすべきは荷重量ではなく、荷重の位置です。
「体重を落とす」「練習量を減らす」では届きません。外側に乗っている状態そのものを変える必要があります。
背景として、後足部内反や凹足(cavus)といった足部形態を持っている競技者では、もともと外側に乗りやすい構造をしています。
そして、その形態は運動療法では変わりません。 変えられるのは、その形態のうえでどう荷重するかです。
母指球に乗せるには、先に第1列が下りる必要がある
「内側に乗せましょう」と言っても乗れない症例があります。乗るための構造が動いていないからです。
長腓骨筋という筋
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 起始 | 腓骨頭、腓骨体外側面の上部 |
| 走行 | 外果の後方 → 立方骨下面の溝 → 足底を斜めに横切る |
| 停止 | 第1中足骨底、内側楔状骨 |
| 作用 | 足関節底屈、足部外反、第1列(第1中足骨)の底屈 |
走行を追うと、この筋の性質が見えます。
外側から始まって、足底を横切り、内側に停止します。 つまり、外側の筋でありながら、内側を下ろす筋です。
だから、母指球荷重の前提になります
母指球に荷重するということは、第1中足骨頭が床に届いているということです。
第1列が背屈位で保持されていれば、床に届きません。そこへ「内側に乗って」と指示すると、どうなるか。
| 指示だけ出したとき | 起きること |
|---|---|
| 第1列が下りない | 足部全体を回内させて代償する |
| 足部が回内する | 膝が内側へ入る(knee-in) |
| さらに乗ろうとする | 股関節内転・内旋が増える |
外側荷重は減るかもしれませんが、別の問題を作ります。
順序を分けます
| 段階 | 何をするか | 狙い |
|---|---|---|
| ① OKC | 長腓骨筋のエクササイズ | 第1列を下ろす能力そのものを作る |
| ② CKC | 荷重下で母指球に乗る | 作った能力を、荷重のなかで使う |
| ③ 動的課題 | ホップ、ジャンプ、カッティング | 速度と衝撃のなかで保つ |
①を飛ばして②から入ると、代償で乗ります。 ここが実務上いちばん効く順序だと考えています。
【私見】 「①を飛ばすと代償で乗る」という部分は、私の臨床上の判断です。長腓骨筋の先行トレーニングがジョーンズ骨折の再発率を下げる、という直接的な研究は見つけていません。ただ、第1列が下りない足で母指球荷重を指示すると、その場で膝が内側に入るのは繰り返し観察します。
リハビリの順序:受傷機序の方向を、最後に戻す
ここが記事の軸です。
外側荷重が原因なら、外側柱に最も応力がかかる課題を最後に置くのが筋の通った並べ方になります。
| 運動面 | 課題の例 | いつ戻すか |
|---|---|---|
| 矢状面(前後) | 前方シングルホップ | 早い |
| 水平面(回旋) | ジグザグ、カッティング | 中間 |
| 前額面(左右) | 左右のジャンプ | 最後 |
前後の跳躍は、外側柱への剪断が比較的小さくなります。左右方向は、そのまま外側への荷重です。
ここまでの全部が、最後の1つを安全に入れるための準備だと考えています。
訓練後期のメニュー
| 種目 | 狙い | 注意点 |
|---|---|---|
| シングルホップ(前方) | 片脚での支持と着地の再獲得 | 矢状面から入る |
| ジグザグ | 水平面の要素を少しずつ | 減速局面を見る |
| トリプルホップ(軽め) | 連続した着地。距離は追わない | 距離を計測しない |
| サイドKBW+バンド | 前額面での股関節コントロール | 荷重下で抵抗を加える |
| ジャンプ | 股関節と膝で衝撃を吸収する | 沈み込んで受ける |
この時期の着地は「ソフト」です
股関節と膝の屈曲で衝撃を受けると、力の立ち上がりが緩やかになり、遠位に届く負荷が減ります。
足部が受ける分が小さくなる、ということです。だから、この時期はこれで正解です。
トリプルホップを「軽め」にして距離を計測しないのも、同じ理由です。距離を測った瞬間、選手は最大努力で跳びます。
復帰期のメニュー
| 種目 | 狙い |
|---|---|
| カッティング | 競技動作そのもの。減速と方向転換 |
| トリプルホップジャンプ | 連続する着地の耐性 |
| ジャンプ(スティフランディング) | 足関節の剛性で受ける |
| タックジャンプ | 高さと接地時間の短縮 |
| ブルガリアンスクワット → タックジャンプ | 片脚の筋力から、両脚の爆発的動作へつなぐ |
スティフランディングを、ここまで待つ理由
これが訓練後期との最大の違いです。
| ソフトランディング | スティフランディング | |
|---|---|---|
| 股関節・膝の屈曲 | 大きい | 小さい |
| 力の立ち上がり | 緩やか | 急峻 |
| 主に受ける場所 | 股関節・膝 | 足関節・足部 |
| 時期 | 訓練後期 | 復帰期 |
スティフランディングは、足部・中足骨に直接来ます。 だから早期には入れられません。
しかし、競技はスティフです。
カッティングも切り返しも、毎回沈み込んでいたら間に合いません。接地時間を短くするには、剛性で受けるしかありません。
入れずに復帰させると、試合で初めてスティフランディングをすることになります。
だから最後に必ず入れます。避けて通すのではなく、順番を最後にするという考え方です。
ブルガリアンスクワットからタックジャンプへ
片脚での筋力発揮のあとに、両脚の爆発的な跳躍を続けます。
筋力を出した直後に、その筋力を速度に変換させる組み合わせです。復帰期に置くのは、両方が単独で成立してからでないと形が崩れるためです。
進行の基準
| 基準 | 確認方法 |
|---|---|
| 運動後の疼痛が24時間以内に戻る | 翌朝の状態を本人に記録させる |
| 第5中足骨基部に圧痛がない | 毎回、直接触って確認する |
| 母指球に荷重できる | 見た目ではなく、足底の接地を確認 |
| ホップテストの左右差 | 距離を測るのは訓練後期の終盤から |
| 画像上の癒合 | 主治医の判断に従う |
2行目を毎回やってください。 骨折部の圧痛は、本人が痛みとして訴える前に出ることがあります。
3行目も、目視では判断できません。母指球の下に手を入れて、荷重で挟まれるかを確認します。
復帰後も続けるもの
足部形態は変わりません。 後足部内反も凹足も、運動療法では変えられません。
だから、外側に乗りやすい構造は復帰後も残ります。残るものに対しては、続けるものを用意する必要があります。
| 続けるもの | 理由 |
|---|---|
| 長腓骨筋のトレーニング | 第1列を下ろす能力は、使わなければ落ちる |
| インソール | 外側の除圧と、第1列の落とし込みを構造で助ける |
| 母指球荷重の確認 | 疲労した状態では外側に戻りやすい |
インソールの考え方はこちらにまとめています。
→「インソールの選び方|理学療法士が7製品を比較して考えた「合う・合わない」の基準」
【私見】 再骨折を減らすうえで、私がいちばん重要だと考えているのはここです。復帰までのメニューは終わりがありますが、足部形態には終わりがありません。 何を続けるかまで決めて復帰させる、という形にしています。
まとめ
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 数字 | 手術で復帰率98.8%・9.6週、保存で71.6%・13.1週(Attia 2021) |
| 区別 | Zone 1の裂離骨折とは分けて考える。 本記事はZone 2・3 |
| 原因 | 外側荷重。減らすのは荷重量ではなく荷重の位置 |
| 前提 | 母指球に乗るには第1列が下りる必要がある |
| 順序① | 長腓骨筋(OKC)→ 荷重下で母指球 → 動的課題 |
| 順序② | 着地はソフト(訓練後期)→ スティフ(復帰期) |
| 順序③ | 左右のジャンプは最後。受傷機序そのもの |
| 復帰後 | 足部形態は変わらない。長腓骨筋とインソールは続ける |
受傷の原因になった方向を、最後に戻す。 この記事で言いたいのは、その一点です。
参考文献
- Attia AK, Taha T, Kong G, Alhammoud A, Mahmoud K, Myerson M. Return to play and fracture union after the surgical management of Jones fractures in athletes: a systematic review and meta-analysis. Am J Sports Med. 2021;49(12):3422-3436.
- Metzl JA, Bowers MW, Anderson RB. Fifth metatarsal Jones fractures: diagnosis and treatment. J Am Acad Orthop Surg. 2022;30(4):e470-e479.
注意事項
本記事はリハビリテーションの考え方の一例を示したものであり、個別の症例に対する治療・指導を保証するものではありません。
術式、固定方法、荷重の許可時期、競技復帰の判断については、主治医の指示が最優先です。 本記事の内容は、主治医のプロトコルを置き換えるものではありません。
ジョーンズ骨折は遷延癒合と再骨折の頻度が高い骨折です。疼痛や圧痛が出た場合は、自己判断で進めず、必ず主治医に相談してください。
掲載内容は一般的な例示に基づいており、すべての症例に適用できるわけではありません。実際のプログラムの策定と実施にあたっては、専門医および理学療法士等と十分に相談のうえ行ってください。
なお、本記事の内容に基づく判断により生じた事故や健康被害について、当方は一切の責任を負いかねます。
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