【理学療法士が解説】変形性膝関節症のリハビリ|エビデンスに基づく治療と運動療法
変形性膝関節症(膝OA)のリハビリを、OARSIガイドラインとレビュー論文をもとに整理しました。中核となる患者教育・運動・減量の中身と効果の大きさ、臨床で組んでいる運動(大腿四頭筋・股関節外転筋・股関節内旋・膝の伸展制限)、装具やインソールなど補助的な治療の位置づけまで解説します。
変形性膝関節症(膝OA) のリハビリを、ガイドラインとレビュー論文、そして私が臨床で組んでいる運動の3つから整理します。以降、本文では膝OAと表記します。
| この記事で扱うこと | 主な根拠 |
|---|---|
| 中核となる治療(患者教育・運動・減量) | OARSIガイドライン(Bannuruら 2019)、レビュー論文(Holdenら 2023) |
| 臨床で組んでいる運動 | 筋力の研究と、私の臨床での組み立て |
| 補助的な治療と、新しい治療法 | 同上のレビュー論文 |
薬物治療と手術は扱いません。
対象読者: 理学療法士など、膝OAのリハビリに携わる専門職。膝の痛みがある一般の方にも参考になるように書いています。
ガイドラインで「中核」とされる治療
国際変形性関節症学会(OARSI)の2019年のガイドラインでは、膝OAの中核的治療(Core Treatment)は次の3つです(Bannuruら 2019)。
| 中核的治療 | 中身 |
|---|---|
| 患者教育 | 病気の理解、治療の選択肢、自分で管理する方法 |
| 運動 | 陸上での構造化された運動。筋力・有酸素・バランス |
| 減量 | 食事による体重管理(運動と組み合わせて) |
股関節OAでは、このうち減量が中核に入っていません。股関節については「変形性股関節症の保存療法|骨頭被覆率と立ち方から考える」で整理しています。
ここからは、2021年4月〜2022年3月に出たOAのリハビリ研究をまとめたレビュー論文(Holdenら 2023)を軸に、それぞれの中身を見ていきます。
患者教育:運動と組み合わせて初めて効く
患者教育だけでは、身体機能の改善は小さいようです。
一方、メタ分析では、患者教育に運動を組み合わせると、患者教育だけの場合より、短期的に痛みと身体機能が改善しました(痛みSMD 0.44、身体機能SMD 0.81。Holdenら 2023 のまとめ)。教育と一緒に運動を行うことで、運動を続けやすくなるためではないか、と考えられています。
患者教育の中身の例
具体的にどんな教育が行われているのか、レビューで紹介されていたRCT(Rezendeら 2021)を読んでみました。2日間の教育プログラムを通常の治療に足したところ、機能と筋力が改善した研究です。
| 担当 | 教育の内容 |
|---|---|
| 整形外科医 | 解剖、危険因子、治療法、病気の説明 |
| 栄養士 | 量を減らすだけでなく、低カロリーでバランスのよい食事 |
| 理学療法士 | 運動の重要性、ストレッチと筋力トレーニングの方法、姿勢、負荷の調整。運動の利点は痛みの管理と予防にあり、骨や関節の形そのものが治るわけではないことも説明する |
| 作業療法士 | 掃除、しゃがみ込み、物の持ち上げ、座る・寝る、台所仕事、アイロンがけ、浴室での動作など、日常生活で関節を守る方法 |
運動の指導は、次の内容でした。
- ストレッチ、等尺性・等張性の筋力トレーニング。自宅で負荷を少しずつ上げる方法を説明し、冊子を配る
- 有酸素運動:自覚的運動強度(RPE)11〜13で、1日30〜60分、週5回。 歩行、固定式の自転車、ダンス、水泳など好みのもので。痛みがある場合は自転車と水泳
- 筋力トレーニング:RPE 14〜17で、8〜12回×2〜3セット、週3回。 ベンチプレス、スクワット、シーテッドロウ、レッグエクステンション、ショルダープレス、レッグカール、上腕三頭筋、カーフレイズ、上腕二頭筋の種目
自覚的運動強度(RPE): 運動のきつさを、本人の感覚で6〜20の数字で表す尺度です。おおよそ、11が「楽である」、13が「ややきつい」、15が「きつい」、17が「かなりきつい」にあたります。
これがすべてではありませんが、多職種でこれだけの内容を伝えていました。
運動:段階的に、続けられる形で
膝OAには、段階的に負荷を上げる運動が勧められています。
レビューで取り上げられた新しい知見の1つが、段階的なアプローチです。膝OAの345名を対象にしたRCTで、まずインターネットの運動プログラムから始め、3か月で改善が足りない人だけ電話でのコーチングへ、さらに3か月後も足りない人は理学療法士の対面指導へと「段階を上げる」方法が試されました。9か月の時点で、対照群より症状が改善しました。改善の幅は、臨床的に意味のある範囲の下限程度でした(Holdenら 2023 のまとめ)。レビューでは、臨床的にも費用の面でも有効な方法として紹介されています。
【私見】 有酸素運動、ストレッチ、筋力トレーニング、ヨガ、ピラティス、太極拳など、運動の種類はいろいろあります。基本的には、膝の痛みを強めず、続けられることがいちばん大事だと考えています。
臨床で組んでいる運動
私が勤務先のクリニックで処方している運動です。
① 大腿四頭筋の筋力
膝OAになっていない人を2年以上追跡した研究をまとめたメタ分析では、膝を伸ばす筋力が弱い人ほど、膝OAを発症しやすい傾向がありました(症状のある膝OAのオッズ比:女性1.85、男性1.43。Øiestadら 2022、46,819名)。ただし、エビデンスの質は低いと評価されています。
【私見】 内側広筋を意識して鍛えるようにしています。歩行時の膝の安定と、関節へのストレスに関わると考えているためです。内側広筋だけを選んで鍛えられるかについては、はっきりした根拠はありません。
② 股関節外転筋の筋力
内側型の膝OAでO脚のある89名のRCTでは、股関節の外転筋と内転筋を12週間鍛えると、痛み・身体機能・筋力が改善しました(Bennellら 2010)。ただし、膝の内側にかかる負担の指標(膝関節内転モーメント)は変わりませんでした。著者らは、股関節の筋力強化が関節の変形の進行を変える可能性は低いとしています。
つまり、症状と機能を良くする目的で行う運動です。
③ 股関節の内旋可動域
【私見】 股関節の内旋の動きが減ると、O脚の方向を助長する可能性があると考えて、内旋の可動域を確保しています。歩行中にどこで回旋が起きているかの見分け方は「ターミナルスタンスで下腿が外旋する|「どこで」起きているかを分ける」にまとめています。
④ 膝の伸展制限
内側型の膝OAの66名で、伸展制限と関連していたのは内側の後方関節包の硬さでした(Okadaら 2025)。伸展制限を半月板の動きから考える方法は「膝の屈曲・伸展制限は半月板の動きから考える」で整理しています。
減量:運動と組み合わせる
体重を減らすことは、特に肥満のある膝OAの方にとって中心的な治療です。
膝OAの22のRCT(2,656名)を比べたネットワークメタ分析では、痛みを減らす効果が大きかったのは、減量手術に次いで、低カロリー食+運動、集中的な減量+運動でした。さらに、体重が1%減るごとに、痛みのスコア(WOMAC)が約2点下がる関係も示されています(Holdenら 2023 のまとめ)。
【私見】 安静にして筋肉が落ちても、体重は減ります。しかし筋力の低下は、将来のサルコペニアにつながりかねません。体重を減らすときにも、運動は欠かせません。
テクノロジーの役割
電話、ウェブ、アプリ、パソコン、VRなどで運動プログラムや患者教育を届ける方法をまとめたメタ分析では、対照群と比べて、短期的に膝の痛みと生活の質が改善しました。身体機能の改善は認められていません(Holdenら 2023 のまとめ)。通院が難しい方に中核的治療を届ける手段として、注目されています。
補助的な治療
以下の治療は、大規模で質の高い研究が少なく、中核的治療に足す「補助的な治療」という位置づけです。
| 治療 | 研究で分かっていること(Holdenら 2023 のまとめ) |
|---|---|
| 膝外反装具 | 7つのRCTと17のコホート研究(579名)のレビューで、一部の人に短期的な痛みと機能の改善。長期のデータはなく、研究の質は低い |
| 外側ウェッジインソール | 主に外側ウェッジを調べた15研究(1,086名)のメタ分析で、有効性は認められなかった |
| 靴 | 内側型膝OAの164名のRCTで、柔らかく平らな靴より、安定した支持のある靴のほうが歩行時の痛みが改善した |
| 鍼・指圧 | 少なくとも10のRCTと5つのシステマティックレビュー。効果があるとするもの、ないとするものが混在 |
| 電気刺激(TENS) | 220名のRCTで、偽のTENSと比べて痛みは改善しなかった。一方、装着型のTENSが弱オピオイドに劣らなかった研究もある |
| レーザー | 10のRCT(495名)のメタ分析で、運動に足すと痛みや機能が改善。ただし、どのガイドラインでも推奨されていない |
| 温泉・泥 | 17のシステマティックレビュー(27のRCT)をまとめた研究で、痛みの軽減に有効。ただし研究の質は低い〜非常に低い |
| 徒手療法 | 6つのRCT(730名)で、短期的な痛みの軽減、可動域と機能の改善。長期の結果は一致しない。Mulliganモビライゼーションは、Maitlandより痛みと機能の改善が大きかった(8つのRCT、471名) |
それぞれの使いどころ
膝外反装具は、O脚で膝の内側がつぶれる形に対し、X脚の方向(外反)へ誘導して、内側への圧迫を減らすことを狙います。
外側ウェッジインソールは、足の外側を持ち上げて、X脚の方向へ誘導する治療です。足の向きが膝にも影響する(運動連鎖)、という考え方にもとづいています。
【私見】 メタ分析で有効性が認められなかったからといって、誰にも効かないとは言えないと考えています。適応を見極めて使うことが大事です。
なお、ここでいう外側ウェッジ型は、膝の内側の負担を減らすことを狙った治療用の設計で、市販されているアーチサポート型とは目的が違います。一般向けのインソールの選び方は「インソールの選び方|理学療法士が7製品を比較して考えた「合う・合わない」の基準」で整理しています。
【私見】 温泉や泥は、気持ちがよく、生活の質が上がるのはうなずけます。筋が温まって可動域が広がるのも妥当な結果です。生活に取り入れるのはよいですが、それだけにとどめるのは勧めません。鍼については、どの人に効いてどの人に効かないかを見極める必要があると考えています。
新しい治療法:血流制限トレーニング
腕や脚の付け根にカフを巻き、血流を制限しながら筋力トレーニングを行う方法です。正確なしくみは分かっていませんが、筋肥大を起こす生化学的・生理的な変化を促すと考えられています。
1年間で少なくとも4つのシステマティックレビューが出ていますが、膝OAに有効かどうかは、まだはっきりしていません(Holdenら 2023)。
【私見】 わざわざ血流を制限しなくても、痛みを強めない方法で筋力を上げるほうが簡単だと考えています。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 中核的治療 | 患者教育、運動、減量(OARSI 2019) |
| 患者教育 | 運動と組み合わせて初めて効果が大きくなる |
| 運動 | 段階的に。痛みを強めず続けられること |
| 臨床で組む運動 | 大腿四頭筋、股関節外転筋、股関節の内旋可動域、膝の伸展制限 |
| 減量 | 低カロリー食や減量に運動を組み合わせる。体重1%減で痛みスコア約2点減 |
| 補助的な治療 | 装具、インソール、鍼、電気刺激など。中核的治療に足すもの |
参考文献
Bannuru, R. R., Osani, M. C., Vaysbrot, E. E., et al. (2019). OARSI guidelines for the non-surgical management of knee, hip, and polyarticular osteoarthritis. Osteoarthritis and Cartilage, 27(11), 1578–1589. doi:10.1016/j.joca.2019.06.011
Bennell, K. L., Hunt, M. A., Wrigley, T. V., Hunter, D. J., McManus, F. J., Hodges, P. W., Li, L., & Hinman, R. S. (2010). Hip strengthening reduces symptoms but not knee load in people with medial knee osteoarthritis and varus malalignment: a randomised controlled trial. Osteoarthritis and Cartilage, 18(5), 621–628. doi:10.1016/j.joca.2010.01.010
Holden, M. A., Nicolson, P. J. A., Thomas, M. J., Corp, N., Hinman, R. S., & Bennell, K. L. (2023). Osteoarthritis year in review 2022: rehabilitation. Osteoarthritis and Cartilage, 31(2), 177–186. doi:10.1016/j.joca.2022.10.004
Okada, S., Yagi, M., Taniguchi, M., et al. (2025). Investigation of the relationship between soft tissue stiffness and maximum knee extension angle in patients with knee osteoarthritis. Journal of Biomechanics, 182, 112582. doi:10.1016/j.jbiomech.2025.112582
Øiestad, B. E., Juhl, C. B., Culvenor, A. G., Berg, B., & Thorlund, J. B. (2022). Knee extensor muscle weakness is a risk factor for the development of knee osteoarthritis: an updated systematic review and meta-analysis including 46 819 men and women. British Journal of Sports Medicine, 56(6), 349–355. doi:10.1136/bjsports-2021-104861
Rezende, M. U., Brito, N. L. R., Farias, F. E. S., et al. (2021). Improved function and strength in patients with knee osteoarthritis as a result of adding a two-day educational program to usual care. Prospective randomized trial. Osteoarthritis and Cartilage Open, 3(1), 100137. doi:10.1016/j.ocarto.2020.100137
注意事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療行為や診断・治療の代替ではありません。
痛み・腫れ・熱感が強い方、医師から運動制限を指示されている方は、実施前に必ず医師または理学療法士にご相談ください。実施中に痛みが強くなった場合は中止してください。
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