体幹(コア)機能の評価法ガイド|現場PTが使う6つのテストと臨床での活かし方

姿勢

はじめに:体幹評価が難しい理由

「体幹トレーニングが重要」とわかっていても、何をもって体幹機能が低下していると判断するかは難しい問いです。

その理由は、体幹を構成する筋が多層にわたり、前方・側方・後方・上方・下方それぞれに異なるブロックが存在するためです。

ブロック 主な筋
前方〜側方 腹横筋、内腹斜筋、外腹斜筋、腹直筋
後方 腸肋筋、最長筋、棘筋、多裂筋(脊柱起立筋群)
上方 横隔膜
下方 肛門挙筋、尿道括約筋、骨盤底筋群

これだけ多くの筋が関与するため、「どこをどう評価するか」の視点が定まらないと、評価とトレーニングがばらばらになりがちです。

この記事では、整形外科・スポーツリハビリの現場で活用しやすい体幹機能評価を6つ厳選し、それぞれの実施方法・陽性所見の解釈・臨床での使いどころをまとめます。

対象読者: 理学療法士・アスレティックトレーナー・トレーナーなど、体幹機能の評価とリハビリに携わる医療・スポーツ専門職


評価①:SLR抵抗テスト

実施方法

背臥位で下肢を30°挙上した状態から、検者が抵抗を加えます。

陽性所見と解釈

  • 腰椎前弯の代償(いわゆる反り腰の方向)や骨盤回旋が生じた場合に陽性と判断し、体幹機能低下を疑います
  • 対側の骨盤挙上が起こる場合 → 対側の腹斜筋・大殿筋・ハムストリングスの機能不全を示唆

臨床での注意点

簡便に実施できる評価ですが、腹筋群の問題なのか股関節伸展筋群の問題なのかを区別しにくいという限界があります。スクリーニングとして用い、陽性所見に対してさらに詳細な評価を加えるのが実践的な使い方です。


評価②:Sahrmann Core Stability Test(SCST)

SCST(サーマンコアスタビリティテスト)は、Shirley Sahrmannが提唱した体幹安定性の評価法です。日本語では「サーマン」「シャーマン」どちらの表記も使われます。

背臥位で下肢の課題を段階的に難しくしていき、腰椎の代償が出た段階を上限とするという構造です。Level 0〜5の6段階で判定します。

準備するもの

圧センサー(プレッシャーバイオフィードバックユニット) を使います。腰椎前弯部の下に設置し、40mmHgの圧を維持できるかを判定の基準にします。

この圧が保てているかどうかが全レベル共通の合否基準です。下肢の動きができても、圧が抜けていればそのレベルはクリアではありません。

開始肢位

  1. 膝を曲げた背臥位で、腰椎前弯部に圧センサーを設置する
  2. Draw-inを行わせ、40mmHgの圧を維持する
  3. 膝関節は快適な屈曲位とし、片側ずつ股関節を100°まで屈曲させる
  4. もう一方の股関節も同じ位置まで屈曲させる

この肢位が、Level 2以降すべての開始肢位になります。

圧を維持したままこの開始肢位を取ることが困難な場合、Level 0と判定します。

各レベルの実施方法

Level 実施内容
0 圧を維持して開始肢位を取ることができない
1 開始肢位を保持できる(上記の手順そのもの)
2 開始肢位から、一側下肢の踵をゆっくり下ろし、踵を床に滑らせながら膝を完全伸展させる。その後、開始肢位に戻す
3 開始肢位から、一側下肢の踵を床上12cmまでゆっくり下ろす。踵を浮かせたまま膝を完全伸展させ、開始肢位に戻す
4 開始肢位から、両側下肢の踵をゆっくり床に下ろす。踵を滑らせながら両膝を完全伸展させる。その後、開始肢位に戻す
5 開始肢位から、両側下肢の踵を床上12cmまでゆっくり下ろす。踵を浮かせたまま両膝を完全伸展させ、開始肢位に戻す

難易度が上がる軸は2つです。

  • 片側 → 両側(Level 2・3 → Level 4・5)
  • 踵を床に接地 → 床上12cmで保持(Level 2・4 → Level 3・5)

踵を浮かせたままにすると、下肢の重量が骨盤前傾方向のモーメントとして働き続けます。これに抗して圧を保てるかどうかが問われます。

Sahrmann Core Stability Test のレベル分類

Sahrmann Core Stability Testのレベル分類(飛田ら, 2022 より)

参考:飛田広大ら「発育期の腰椎分離症に対するSahrmann Core Stability Testによる評価」日臨スポーツ医会誌 30(1), 2022

陽性所見と解釈

腰椎の代償(腰が反る・骨盤が傾く・圧が抜ける)が生じた段階が、そのまま体幹安定性の限界を示します。

回数をこなせるかではなく、1回目で崩れないかを見てください。代償が出た状態で反復させても、望まない運動パターンを学習させるだけです。

臨床での活用

  • 共通言語として使いやすいため、カルテ記録や他スタッフとの情報共有に重宝します
  • スポーツ復帰基準の目安としても活用可能です。ジョギング・ダッシュ動作はLevel 3相当の姿勢制御が必要なため、Level 3をクリアできていない段階でのジョギング開始はリスクがあると判断できます
  • そのままトレーニングになります。 判定されたレベルの1つ上を課題として与えれば、評価と介入が地続きになります

評価③:デッドバグ(Dead bug)

実施方法

背臥位で股関節・膝関節を90°に保ちながら、対側の上肢と下肢を同時に伸展させていきます。腰椎のニュートラルポジションを保てる範囲を評価します。

陽性所見と解釈

以下のいずれかが生じた場合に体幹安定性の低下と判断します。

  • 腰椎が床から離れる(前弯増大)
  • 骨盤が左右に傾く
  • 動作中に息を止める(呼吸と体幹安定の協調不全)

臨床での使いどころ

SCSTと組み合わせて使うことで、静的な安定性と動的な安定性の両面からアプローチできます。四肢の運動速度や重力方向を変えることで負荷調整も容易なため、評価とトレーニングを一連の流れとして実施しやすい種目です。


評価④:PERFECTスキーム(骨盤底筋評価)

骨盤底筋群の機能を多角的に評価するスキームです。会陰腱中心(肛門〜会陰部の間)を触知し、各要素を確認します。

評価項目

略称 項目 内容
P Power 最大収縮筋力
E Endurance 収縮の持続時間
R / F Fast contraction 瞬発的な最大収縮の回数
E Elevation 最大随意収縮中の膣後壁の挙上の有無
C Co-contraction 腹横筋との共同収縮の有無
T Timing 咳などの腹圧課題時の収縮タイミング

臨床での注意点

評価手技として有用ですが、患者への十分な説明と同意取得が前提です。プライバシーへの配慮と、事前の目的・方法の説明を丁寧に行ってから実施してください。

参考:田舎中真由美, 青木芳隆「骨盤底筋トレーニングのための基礎と実践」体力科学 71(3), 2022


評価⑤:pelvic floor functional test

実施方法

仰臥位で軽く膝を立て、以下のような言語指示で収縮を促します。

  • 「肛門を締めるように」
  • 「尿を止めるように」

収縮の有無と感覚(◎ある / △不明瞭 / × なし)を確認します。

臨床での使いどころ

PERFECTスキームより簡便なため、初回評価のスクリーニングや骨盤底筋への意識づけとして活用できます。収縮感覚があることを確認してからPERFECTスキームに進む、という流れが臨床でも実施しやすいです。


評価⑥:主観的評価(PFDI-20)

PFDI-20(Pelvic Floor Distress Inventory) は、骨盤底機能障害による日常生活への影響を患者自身が回答する質問票です。

膀胱・腸・骨盤臓器脱に関する20項目から構成され、症状の重症度と生活への支障を定量的に把握できます。身体所見だけではわからない患者のQOLへの影響を補完する評価として有用です。


補足:体幹筋のMMTをどう扱うか

もっとも基本的な体幹機能の評価として、**体幹筋のMMT(徒手筋力検査)**があります。養成校で最初に習う方法です。

ただ、実際の現場では使いどころが限られます。理由は3つあります。

1. 腰椎の後弯可動域が必要になる

体幹屈曲のMMTは、腰椎を丸める動きを前提としています。後弯方向の可動域が落ちている方は、筋力があっても課題を遂行できません。 この場合、測っているのは筋力ではなく可動域です。

2. 若年者には簡単すぎる

運動習慣のある若い方は、上位の段階を難なくクリアしてしまいます。全員が満点になる評価は、差を見るための道具として機能しません。

3. 高齢者には難しすぎる

逆に高齢の方では、最初の段階から実施できないことが少なくありません。できない、という情報しか得られず、どこから介入すべきかが見えません。

つまりMMTは、対象者の層によって天井にも床にも張り付く評価です。誰にでも使える方法ではない、という前提で扱う必要があります。


対象者で評価は変える|現場での実際

そこで、実際には対象者に応じて見るものを変えています。

高齢者の場合:まず「入るかどうか」を見る

高齢の方では、収縮そのものが入るかを確認するところから始めます。

  • ドローインができるか(下腹部を引き込み、腹横筋を選択的に働かせられるか)
  • ブレーシングができるか(腹部全体を固めて腹圧を高められるか)

段階づけされたテストの点数を出すより、この2つが成立しているかどうかのほうが、次の一手を決めるうえで役に立ちます。ここが入らないなら、負荷を上げた課題は成立しません。

若年者の場合:プランクに負荷を足していく

若い方には、プランクの姿勢で腰椎の前弯が出ていないかを見ます。

ただし、プランク自体は多くの方がこなせてしまいます。そこで負荷を段階的に足していきます。

段階 課題
1 プランク保持(腰椎前弯が出ないか)
2 片脚を挙上
3 片手を挙上
4 対角線上に上肢と下肢を同時挙上

支持基底面が狭くなるほど、体幹には抗回旋の要求が加わります。どの段階で腰椎の代償が出るかが、そのまま安定性の限界を示します。

考え方はSahrmann Core Stability Testと同じで、課題の難易度を上げていき、代償が出た地点を上限とするという構造です。

トレーニングが、そのまま評価になる

ここまで見てきて分かるとおり、評価とトレーニングは別のものではありません。

プランクに片脚挙上を足す。デッドバグで四肢の動きを大きくする。SCSTのレベルを上げる。これらはすべてトレーニングの負荷設定であると同時に、その日の安定性を測る物差しでもあります。

この見方をすると、次の利点があります。

  • 評価のためだけの時間を取らなくてよい(限られた単位数のなかでは大きい)
  • 毎回のトレーニングが、そのまま経過の記録になる
  • 患者・選手にとっても「できる段階が上がった」という形で変化が伝わる

専用のテストバッテリーを組むより、日々の種目のなかに評価の視点を持ち込むほうが、現場では続きます。


まとめ:評価の選び方と組み合わせ方

場面 推奨評価
スクリーニング・初回評価 SLR抵抗テスト、SCST Level 0〜3
スポーツ復帰基準の設定 SCST Level 3以上、デッドバグ
高齢者 ドローイン・ブレーシングが入るか
若年者・スポーツ選手 プランク+四肢挙上(対角線まで)
骨盤底筋の機能確認 pelvic floor functional test → PERFECTスキーム
患者のQOL・症状把握 PFDI-20(主観的評価)

体幹機能の評価は、単一のテストで完結させないことが重要です。SCSTのような動的安定性テストと、PERFECTスキームのような局所的な筋評価を組み合わせることで、介入の優先順位が明確になります。

そして、対象者によって使う道具を変えること。MMTのように天井にも床にも張り付く評価を全員に当てても、必要な情報は得られません。

最後にもう一度書いておきます。評価とトレーニングは切り離す必要がありません。 SCSTのレベルを上げる、プランクに四肢挙上を足す、デッドバグの可動範囲を広げる。これらはすべて、負荷設定であると同時に、その日の安定性を測る物差しです。

限られた時間のなかで続けられるのは、日々の種目そのものに評価の視点を持ち込むやり方だと思っています。


評価の次に:トレーニングの選択

評価で弱い部位が見えたら、そこに合わせて種目を選びます。

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