減った分の体重はどこに行くのか

ダイエット

ダイエット(体重減少)のために運動は有効な手段とされますが、実際に「減った」体重がどこにいくのかを理解している人は少ないと思います。

  • 「減った分の体重はどこにいくのか?」
  • どうして体重を減少させるのは難しいの?
  • 体重が減少するメカニズムは?
  • ダイエットのためにどんな運動をしたら良い?

この記事を読むことで、これらの疑問が解決できます。

【結論】

  • 減った分の体重は二酸化炭素と水にな
  • 二酸化炭素として放出されるので、大量の排出が必要となる。だから体重を減少させるのは難しい。
  • しかし適切な運動を用いることで、ダイエットは可能になる

参考文献

Merritt, E. K. (2021). Why is it so hard to lose fat? Because it has to get out through your nose! An exercise physiology laboratory on oxygen consumption, metabolism, and weight loss. Advances in Physiology Education45(3), 599-606.

「なぜ脂肪は落ちにくいのか?鼻から出さないといけないから!酸素消費量、代謝、ダイエットに関する運動生理学の研究室」というタイトルです。

インパクトファクターは1.818の雑誌です。

化学式を考えるとわかりやすい

人間の運動は筋を介して行われますが、筋のエネルギー源はアデノシン三リン酸(ATP:adenosine triphosphate)と言われています。

このATPを生み出すために、有酸素運動では炭水化物(グルコース)と脂肪(脂肪酸)が主にエネルギーとして利用されます。

詳しい方は知っていると思いますが、ATPの再合成経路には、大きく以下の3つの経路に分けられます。

  • 解糖系
  • 有酸素系
  • ATP-PCr系

このうち、ATP-PCr系は100m走など、短い時間で大きな筋収縮が必要な場合に用いられる経路です。

一方で、日常生活レベルでは解糖系と有酸素系が主に用いられることが考えられます。

炭水化物や脂肪は有酸素系という経路で酸素を用いて分解され、その過程で二酸化炭素と水が生じます。

解糖系でも最終的にはピルビン酸という物質が有酸素系に取り込まれるので、炭水化物も有酸素系で分解されることになります。

分解の過程で生じる化学式をみてみましょう。

グルコースはC6H12O6と表され、

脂肪酸(パルミチン酸が代表的)はC16H32O2と表されます。

これらは多くの経路をたどりますが、最終的には以下のような式にまとめることができます。

C6H12O6+6O2 → 6CO2+6H2O+エネルギー

C16H32O2+23O2 → 16CO2+16H2O+エネルギー

どちらも二酸化炭素と水に分解されています。

この反応で生じた二酸化炭素は、血液を通して肺に運ばれ、呼気として空気中に吐き出されます。

ランナーは体内に蓄積されたグルコースや脂肪を燃料として、酸素を用いて分解して使用しています。

蓄積された脂肪やグルコースの一部に炭素(C)分子がありますが、それは二酸化炭素として吐き出されています。

こうして、ランナーは運動を通して体重を減少させることができます。

脂肪を「燃焼」したらどこに行くのか?

「体重が減ると、減った分はどこに行くのか」という質問を学生にすると、

「燃焼した」「熱として」「汗として」「尿として」「糞便として」処理されたと答える生徒がいるそうです。

しかし、単純に汗や尿で水分を失うだけでは、炭素分子(C)が考慮されていないので、脂肪を取り除くことはできません。

なぜ体重を減らすのは難しいのか?

炭水化物も脂質も、最終的には汗、尿、便、二酸化炭素として排出されるので、体重を減らすのは難しいと考えられます。

食べたものが二酸化炭素や水として排出されるというのはすごく不思議な感覚ですね。気体として大気中に放出されることで体重が減少することを考えると、やっぱり体重を減らすのって難しいんだと思います。

痩せたいなら、いっぱい呼吸したら良い?

ここまでの説明を聞くと、「二酸化炭素をたくさん排出したら痩せる、ということはたくさん呼吸したら良いんじゃないか?」と思う人もいるかもしれません。

しかし、運動をしていないのに故意に呼吸数を増加させると過呼吸を誘発する可能性があるため、絶対にやめましょう。

故意に呼吸数を増加させると、二酸化炭素の排出が過多になり、血中の二酸化炭素濃度が低下することで過呼吸になる恐れがあります。

運動によって体内で二酸化炭素がたくさん作られるので、その分を自然に排出することで安全に二酸化炭素を排出することができます。

まとめ  やっぱり痩せるには有酸素運動が一番

短距離走など短い時間での運動は痩せづらく、マラソンなどの有酸素運動が効率的です。

もちろん、痩せに対する効果がないわけではないので、筋力トレーニングもお勧めです。

力=質量×加速度 (F=ma)

仕事=力×距離

この式から、体重70kgの人が100mを走るよりも、フルマラソンを走る方がエネルギーが必要になるので、長く運動できるような有酸素運動がダイエットには有効だと考えられます。

また、一般的には筋力トレーニングは解糖系の経路が用いられるため、エネルギー源として脂肪が用いられる割合が小さく、グルコースが主に使用されることが知られています。

有酸素運動は筋力トレーニングよりも脂肪をエネルギー源として使う運動であると言われているため、ダイエットに有効であるとされています。

筋力トレーニングで筋や肝臓に貯蔵されているグリコーゲンを枯渇させた状態で有酸素運動を行うと、効率的に脂肪をエネルギー源として使うことができる可能性が高いと言われています。

痩せるための有酸素運動の方法について

  • ジョギング
  • 水泳
  • 自転車エルゴメータ
  • (ウォーキング)
  • (ヨガ、ストレッチ)

これらの運動が代表的な有酸素運動とされています。

中でも筆者が個人的にお勧めなのはジョギングです。

ジョギングは骨に対してストレスが加わるため、骨粗鬆症の予防にもなると考えています。

ランニングマシンだと、動画を視聴しながら走れるのもいいですよね。

自転車エルゴメータは大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)と大殿筋(おしりの筋肉)などの大きい筋を使うことができるため、筋力の維持としても有効です。

変形性膝関節症などで膝痛がある場合は、医師と相談して他の運動を選択しましょう。

上半身、下半身を含めて全身運動になる水泳もお勧めです。

実は、水泳はジョギングよりもエネルギー消費量が高いとする研究もあります。

ジョギングは上肢の運動が少ない分、水泳の方がエネルギーを消費しやすいのかもしれませんね。

運動が苦手という方は、ウォーキングやヨガ、ストレッチも良いと思います。しかしエネルギー消費量が少ないため、効率的にダイエットをしたい方はやはりジョギングや水泳がお勧めです。

以上、参考になれば嬉しいです。

質問など受け付けておりますので、ぜひコメント下さい。

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