腰椎分離症のリハビリ|腰を止めて股関節と胸椎を動かす

腰椎分離症のリハビリ|腰を止めて股関節と胸椎を動かす 理学療法

腰椎分離症のリハビリで、何をどこまでやるか。

方針そのものは単純です。腰を止めたまま、股関節と胸椎を動かせるようにする。 これに尽きます。

問題は、それをどの順序で、どこまでの負荷で進めるかです。この記事では段階を追って整理します。

対象読者: 理学療法士・アスレティックトレーナーなど、腰椎分離症のリハビリに携わる専門職


なぜ「腰を止める」のか

腰椎分離症は椎弓の疲労骨折です。伸展と回旋の反復によって生じます。

つまり、分離を進行させる動きと、リハビリで避けたい動きは同じものです。

  • 腰椎の伸展
  • 腰椎の回旋
  • そしてその反復

ここから方針が決まります。腰椎を動かさずに、必要な動きを別の場所で作る。 具体的には股関節と胸椎です。

日常でもスポーツでも、体を反らせる場面・ひねる場面はなくなりません。なくすのではなく、担当を移すという考え方になります。


評価

立位アライメント

まず立ってもらって、横から見ます。

分離症は伸展と回旋の反復で起きます。だとすれば、その人がどこで反らせているかを先に知りたい。それは動かす前の静止立位にも出ています。

よく見るのは2つです。

骨盤 胸郭 横から見たときの特徴
スウェイバック 前方位 後方変位 骨盤が前に出て、胸郭が後ろに残る
前方重心 前方偏位 前方偏位 骨盤も胸郭も、まとめて前に出る

どちらも「骨盤が前に出ている」のに、胸郭の向きは逆です。 ここを分けずに「反り腰」とまとめてしまうと、次に何をするかが決まりません。

スウェイバック:伸展が下位腰椎に集まる

骨盤が前方へ移動し、胸郭が後方へ引かれた形です。上位腰椎は平坦化し、伸展は下位腰椎に集まりやすくなります。

分離症はL5に生じることが多い骨折です。伸展が集中する場所と、疲労骨折が起きる場所が重なります。

前方重心:底屈筋で耐えている

骨盤と胸郭がまとめて前方へ出た形です。前に倒れないように、足関節の底屈筋が働き続けることになります。

【私見】 このパターンでは、ふくらはぎが張っている、あるいは明らかに筋肥大していることを経験します。下腿三頭筋が姿勢保持に使われ続けた結果ではないかと考えています。逆に、ふくらはぎの所見のほうから立位戦略を疑うこともできます。

ここは治療につながります。下腿三頭筋が短縮していれば足関節背屈が制限されます。しゃがみ込みや着地で背屈が足りない分は、どこかが代償します。腰椎はその候補です。

→「足関節背屈制限|制限因子の見分け方と距骨外旋による代償」

2つに共通すること

どちらも、腰椎そのものが主役ではありません。見ているのは骨盤の前後位置と胸郭の位置、そして足関節です。

この記事の方針(腰を止めて、股関節と胸椎を動かす)と同じ向きです。立位アライメントの確認は、その入口になります。

体幹の固定機能

体幹の固定機能をどう測るかは、別記事でまとめています。

Sahrmann Core Stability Test(SCST/サーマンコアスタビリティテスト) は、発育期の腰椎分離症に対する評価として用いられた報告があります。日本語では「サーマン」「シャーマン」どちらの表記も使われます。腰椎の代償が出た段階を上限とするテストなので、「腰を止めていられるか」をそのまま数値にできるという性質があります。

→「体幹(コア)機能の評価法ガイド|現場PTが使う6つのテストと臨床での活かし方」


ADL指導

トレーニングより先に、日常で腰を反らせている場面を減らします。

避けてもらうもの

  • 過度な回旋
  • パピーポジション(腹臥位で肘をついて上体を起こす姿勢)

パピーポジションはスマホを見るとき、テレビを見るときに自然と取られます。本人に「反らせている」自覚がないことがほとんどです。具体的な場面を挙げて確認してください。

回数の少ない大きな動作より、無自覚に長時間取っている姿勢のほうが影響します。


徒手療法

  • 腰方形筋のリリース

スタティックトレーニング

ストレッチ

  • 大腿四頭筋ストレッチ
  • 腸腰筋ストレッチ

どちらも骨盤を前傾させる方向に働く筋です。ここが硬いと、立位・歩行で骨盤が前傾し、腰椎は伸展位で固定されます。 止めたい方向に、常時引っぱられている状態です。

① 体幹機能をつくる

狙うのは3つの機能です。

機能 内容
固定機能 腰椎を動かさずに保つ
短縮機能 縮む方向に力を出す
遠心性収縮の機能 伸ばされながら制御する

種目

  • 手は頭の後ろ、膝・股関節90-90°
  • 骨盤を回旋して足を倒す + 肘を外に出す

足を倒す動きに対して、上半身は反対方向に開きます。腰椎で受けずに、体幹全体で制御する課題です。

② 固めたまま、股関節と胸椎を動かす

この記事の中心です。

腰を止められるようになったら、その状態を保ったまま隣の関節を動かします。

  • ヒップリフト
  • 股関節伸展ストレッチ
  • 胸椎ストレッチ
  • インプリント+バンザイ

インプリント(腰背部を床に押しつけた状態)を保ったままバンザイができるか。腕を上げると腰が浮くなら、そこが今の上限です。

③ 殿筋・ハムストリングスが使えているか

股関節伸展を腰椎伸展で代償していないかを見ます。

  • 四つ這いで、股関節屈曲位から股関節伸展ex

収縮の感覚がなければ、先に以下を行います。

  • 股関節伸展ストレッチ
  • 腹斜筋ex

基礎的な種目

  • 股関節OKCトレーニング:SLR、Hip abduction、Hip adduction
  • ドローイン
  • ブレーシング
  • ヒップリフト
  • プランク

負荷を上げる

体幹を固めたまま、四肢に外乱を入れていきます。

  • ブルガリアンスクワット + ミニウォーターバッグ
    • 横、斜め、逆斜め、八の字
  • 30°傾斜位で2kgを扱う
    • 頭の周りを回す
    • 前に伸ばす/上に伸ばす/斜め上に伸ばす
    • 左・前・右に伸ばす
    • ひねった状態で前、左、右、上に伸ばす

腕の位置が変わるたびに、体幹への要求が変わります。どの方向で腰が動くかを見ながら進めてください。


ダイナミックトレーニング

ここからは、動的エクササイズの許可が出てから実施します。

骨癒合の状況や医師の指示によって開始時期は変わります。自己判断で進めないでください。

ストレッチ

  • 胸椎回旋ストレッチ
  • ウィンドミル

腰椎で回旋しない代わりに、胸椎で回旋できる状態を作っておきます。

片膝立ち+バンド+ヒップロック

  • 片膝立ちの姿勢をとります
  • 後ろでバンドを引いた状態を作ります
  • そこからヒップロックへ移行します

バンドの張力が体を後方へ引くので、腰を反らせずに股関節で受け止める必要があります。静的に固定できていても、抵抗が加わると腰で逃げる症例がいます。ここで確認できます。

腰が反った時点で終了です。 回数ではありません。


まとめ

ポイント 内容
発生機序 椎弓の疲労骨折。伸展と回旋の反復
方針 腰椎を止めたまま、股関節と胸椎で動きを作る
評価 SCST。腰椎の代償が出た段階が上限
ADL パピーポジションと過度な回旋を避ける
順序 固定 → 固めたまま隣を動かす → 外乱を足す
動的種目 許可が出てから。片膝立ち+バンド+ヒップロック

「腰を使わない」ではなく、「腰の担当を減らして、隣に振り分ける」という発想で組み立てると、種目の選択がぶれません。


注意事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療行為や診断・治療の代替ではありません。

腰椎分離症は骨癒合の可否が治療方針を左右する疾患です。運動の開始時期・強度は必ず主治医の指示に従ってください。痛みがある状態で自己判断により運動を進めないでください。

実施中に痛みやしびれが出た場合は直ちに中止し、医療機関を受診してください。


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