首を揉むと、そのときは楽になる。でも半日もすれば元に戻る。
デスクワークの方から、よく聞く話です。
戻るのには理由があります。 揉んでも、その筋肉がやっている仕事の量が変わらないからです。
理学療法士として10年、整形外科の現場で姿勢の問題を診てきました。首こりの正体と、環境の整え方を整理します。
首こりの正体は「支え続けている」こと
頭の重さは約5kgあります。体重の8〜10%程度です。ボウリングの球1つ分と考えてください。
この重さが背骨の真上に乗っているあいだは、骨で支えられます。筋肉はあまり働きません。
ところが頭が前に出ると、話が変わります。前に倒れようとする頭を、後ろの筋肉が引き止め続けることになります。
この「頭が前に出た状態」は、ストレートネックと呼ばれることもあります。本来ゆるやかに前へカーブしている首の骨が、まっすぐに近づいた状態を指す言い方です。
デスクワークで7時間。そのあいだずっと、首の後ろは働き続けています。
揉んでほぐれるのは一時的です。 支える仕事の量が変わっていなければ、また同じことが起こります。
原因になる筋肉
後頭下筋群
後頭部の付け根にある、小さな筋肉の集まりです。
頭を細かく支える役割があり、頭が前に出た状態では常に緊張します。ここが硬くなると、頭痛として感じられることもあります。
「首の付け根を押すと気持ちいい」と感じる場所が、だいたいここです。
僧帽筋上部・肩甲挙筋
首の後ろから肩にかけて走る筋肉です。
肩をすくめる方向に働きます。デスクワークで腕を前に出していると、腕の重さを支えるためにここが働き続けます。
首こりと肩こりが同時に起こるのは、この2つが同じ理由で疲れているためです。
そして、背中
意外に思われるかもしれませんが、背中が丸くなると頭は必ず前に出ます。
背中が丸まった状態で頭だけ起こそうとすると、無理な角度になります。だから体は、頭を前に出したまま楽な位置を探します。
首だけ対処しても戻る理由が、ここにあります。
なぜ頭が前に出るのか:作業環境
日本理学療法士協会は、産業分野の予防をまとめたハンドブックでこう述べています。
仕事などで長時間同じ姿勢を続けると背骨にかかる力のバランスが崩れ、筋力低下や猫背が進み、首や腰の痛みの原因になります。
そして具体的な数値が示されています。ここが役に立ちます。
パソコン作業環境のチェックポイント
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| モニターの高さ | 水平視線より下に置く |
| 画面との距離 | 眼から40cm以上 |
| 肘の角度 | 90度になるよう調整する |
| 椅子 | 背もたれのあるものを使う |
| 机・椅子 | 高さ調整ができるものを使う |
| 足元 | 空間を確保する |
モニターの高さが最重要です。
画面が低いと、見るために頭を前に下げることになります。環境が姿勢を決めてしまうわけです。ノートパソコンをそのまま机に置いて使っている方は、まずここを疑ってください。
台に載せて、画面の上端が目の高さより少し下に来るようにするだけで変わります。
2つの視点で考える
同じハンドブックでは、対策を2つに分けています。
- 作業環境管理:机・椅子・モニターを整える
- 作業管理:長時間同じ姿勢をとらない
環境を整えても、同じ姿勢を続ければ結局固まります。 両方が要ります。
具体的には、こう書かれています。
- 前傾姿勢を避ける
- 机や椅子の高さを調整する
- 長時間同じ姿勢をとらない
- クッション等の腰当てで調整する
環境を整えても残る場合
数値どおりに机とモニターを調整した。それでも戻る。
その場合、背中の丸まりが残っています。
背中が丸いままモニターだけ上げると、今度はあごを上げて見ることになります。首の後ろは、やはり縮んだままです。
ここまで来たら、首ではなく背中側を動かす必要があります。
- 背中のストレッチ →「猫背・肩こりを根本から改善する背中ストレッチ8選【理学療法士監修】」
- 道具を使う場合 →「ストレッチポールで猫背・巻き肩を戻す順番|1回10分」
肩が前に入っている方は、そちらも一緒に見てください。→「巻き肩の治し方|原因になる4つの筋肉と場面別のストレッチ」
席でできること
あご引き
- 背もたれに軽く寄りかかります
- あごを軽く引きます(頭を後ろへ引く感覚です)
- 3〜5秒キープ
上を向くのではなく、頭を水平に後ろへスライドさせるイメージです。二重あごを作るような形になります。
肩の上げ下げ
- 息を吸いながら、肩をすくめます
- 息を吐きながら、ストンと落とします
力を入れてから抜くほうが、緩みやすくなります。
回数より頻度です。 1時間に1回、30秒だけでも構いません。同じ姿勢が続く時間を切ることが目的です。
こういう症状があれば、まず受診を
肩・上腕・前腕・手にしびれがある場合は、セルフケアの前に医療機関を受診してください。
- 頸椎椎間板ヘルニア
- 頸椎症性神経根症
- 頸椎症性脊髄症
これらの可能性があります。X線やMRIで原因を確認する必要があります。
手先の細かい作業がしにくい、足がもつれるといった症状がある場合は、特に急いでください。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 首こりの正体 | 約5kgの頭を支え続けていること |
| 揉んでも戻る理由 | 支える仕事の量が変わらないため |
| 原因になる筋肉 | 後頭下筋群、僧帽筋上部・肩甲挙筋 |
| 見落とし | 背中が丸いと頭は必ず前に出る |
| 環境の数値 | モニターは水平視線より下、40cm以上、肘90度 |
| 対策の両輪 | 作業環境管理と作業管理(同じ姿勢を続けない) |
まずモニターの高さを確認してください。そこが原因なら、揉むより早く変わります。
参考文献
公益社団法人日本理学療法士協会. 理学療法ハンドブック シリーズ15「産業分野の予防」. PDF
作業環境のチェックポイントは、同ハンドブック内で「パソコン利用のアクション・チェックポイント」(独立行政法人労働安全衛生総合研究所)を出典として示されているものです。
ご注意ください
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療行為や診断・治療の代替ではありません。特定の症状が改善することをお約束するものではありません。
しびれ・脱力・強い痛みがある方は、自己判断で行わず医療機関にご相談ください。実施中に症状が出た場合は、直ちに中止してください。
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- 背中側から整える →「猫背・肩こりを根本から改善する背中ストレッチ8選【理学療法士監修】」
- 肩が前に入っている方へ →「巻き肩の治し方|原因になる4つの筋肉と場面別のストレッチ」
- 道具を使って整える →「ストレッチポールで猫背・巻き肩を戻す順番|1回10分」
- そもそも良い姿勢とは →「【理学療法士が解説】良い立位姿勢とは?よくある悪い姿勢3例も紹介」

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