五十肩(肩関節周囲炎)の運動療法|炎症期・拘縮期・回復期ごとにやるべきエクササイズを理学療法士が解説

肩関節周囲炎

はじめに:五十肩は「時期」によって正しい動かし方が変わる

「五十肩になったら安静にしていれば治る」と思っていませんか?

実は五十肩(肩関節周囲炎)は、時期によってやるべき運動がまったく異なります。炎症が強い時期に強くストレッチすると悪化しますし、逆に回復期に動かさないでいると可動域が戻りにくくなります。

この記事では、五十肩の3つの病期(炎症期・拘縮期・回復期)ごとに、それぞれの時期に適した運動療法を理学療法士の視点から具体的に解説します。

五十肩の病態・原因・リスク因子については別記事で詳しく解説しています。→「[五十肩(肩関節周囲炎)とは?原因・症状・時期別の治療法を理学療法士がわかりやすく解説](https://miroesblog.com/frozen-shoulder/)」

この記事でわかること:

  • 五十肩の一次性・二次性の違い
  • 病期ごとの理学療法の目的と考え方
  • 炎症期・拘縮期・回復期それぞれの具体的な運動メニュー

注意事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としています。運動療法を実施する際は、必ず医師または理学療法士にご相談のうえ、個人の状態に合わせて行ってください。


肩関節周囲炎の分類:一次性と二次性

五十肩には原因によって「一次性」と「二次性」の2種類があります。治療方針が変わるため、どちらかを把握することが重要です。

一次性の肩関節周囲炎

明確な原因疾患が特定されないタイプです。ただし以下の全身疾患を有する方はリスクが高いとされています。

  • インスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)
  • 甲状腺疾患
  • パーキンソン病

二次性の肩関節周囲炎

他の肩の疾患に続いて発症するタイプです。原因疾患には以下が含まれます。

  • 腱板断裂
  • 肩峰下インピンジメント
  • 上腕二頭筋長頭腱炎
  • 石灰沈着性腱板炎

二次性の場合は原因疾患の治療が優先されるため、まず整形外科での診断を受けることが重要です。再発は比較的少ないとされています。


五十肩の発症率

一般的に、人口の2〜5%が肩関節周囲炎を発症すると推定されています。日本の人口(約1億2,500万人)で試算すると、240〜620万人が該当する可能性があります。

決して珍しい疾患ではなく、自分や身近な人が発症する可能性は十分あります。


病期と保存治療の概要

五十肩の経過は炎症期→拘縮期→回復期の3段階で進みます。保存治療の中心は以下です。

治療法内容
薬物療法非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、グルココルチコイド経口投与
注射療法関節内コルチコステロイド注射
理学療法運動療法(振り子運動、ストレッチ、筋力強化)+物理療法

薬剤単独では限界があり、NSAIDs+理学療法、コルチコステロイド+理学療法の組み合わせで良好な成績が得られるという研究結果も報告されています。


【炎症期(Freezing phase)】の運動療法

この時期の特徴: 痛みが最も強く、可動域制限が進行していく時期。夜間痛が出やすい。

この時期の基本方針: 痛みを抑えることが最優先。無理に動かすと炎症が悪化するため、短時間(1〜5秒)の可動域訓練から始めることが基本です。

推奨される運動

コッドマン体操(振り子運動) 体を前に倒し、重力を利用して腕を自然に揺らします。肩への能動的な負荷が少なく、炎症期に最も安全な運動の一つです。

仰向けでの運動

  • 肩関節の屈曲運動(腕を前方に持ち上げる)
  • 肩関節の内旋・外転運動
  • 上記の複合運動

その他

  • 下垂位外旋運動(腕を下げた状態での外旋)
  • 側臥位での肩関節内転

物理療法の使い分け

状況推奨
痛みが強い時期運動前後のアイシング(寒冷療法)で炎症を抑制
痛みが比較的軽い時期温熱療法を併用することで筋の柔軟性が高まりやすい

姿勢への注意

猫背のように肩が前に出た姿勢(巻き肩・円背)は、肩関節の屈曲や外転の動きを物理的に制限します。運動だけでなく、日常の姿勢改善も並行して行いましょう。


【拘縮期(Frozen phase)】の運動療法

この時期の特徴: 炎症期より痛みは軽減するが、肩の硬さ(可動域制限)が残っている時期。

この時期の基本方針: 痛みに配慮しながら、関節可動域の改善を積極的に進める。ただし過度な運動は炎症を再燃させるため、痛みの範囲内で実施することが重要です。

推奨される運動

炎症期の運動を継続 Freezing phaseで実施した振り子運動などは自宅でも継続してください。

胸・肩前方のストレッチ 拘縮期では特に大胸筋・小胸筋(胸の前面の筋)のストレッチが重要です。これらが硬くなると肩甲骨が前方に引っ張られ、肩関節の動きがさらに制限されます。

肩甲骨内転エクササイズ 肩甲骨を後方・下方に引き寄せながら胸を前上方に張り出す動作は、以下の効果があります。

  • 大胸筋・小胸筋のストレッチ
  • 肩甲骨内転筋(僧帽筋中部・下部線維、菱形筋)の基本トレーニング

肩関節後方のストレッチ 肩関節の後方(後方関節包・後方筋群)の硬さも可動域制限の原因となります。痛みの範囲内でゆっくり伸ばしましょう。

等尺性収縮トレーニング(静的トレーニング) 関節を動かさずに筋肉に力を入れる等尺性収縮は、痛みを増悪させずに筋力低下を防ぐための重要なトレーニングです。


【回復期(Thawing phase)】の運動療法

この時期の特徴: 痛みが軽減し、可動域が徐々に広がってくる時期。「凍結が解ける(Thawing)」状態。

この時期の基本方針: 積極的に動かしながら可動域を回復させ、失った筋力を取り戻す。

可動域トレーニング

痛みの範囲内で積極的に肩を動かし、最終域まで可動域を拡大させていきます。

筋力トレーニングの段階的な進め方

筋力トレーニングは以下の順序で段階的に負荷を上げていきます。

1. 等尺性収縮(関節を動かさず力を入れる)

2. ゴムバンド(セラバンド)を使った運動

3. ダンベルを使った運動

特に重要な筋群

ローテーターカフ(回旋筋腱板) インナーマッスルとも呼ばれる4つの筋(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)からなります。肩関節を安定させる最も重要な筋群で、この時期のトレーニングの中核となります。

アウターマッスル ローテーターカフと並行して以下の筋群のトレーニングも重要です。

  • 三角筋(肩の外側)
  • 大胸筋(胸の前面)
  • 肩甲骨周囲筋(僧帽筋・菱形筋など)

まとめ

五十肩の運動療法は「痛いから全部やめる」でも「痛くても無理に動かす」でもなく、病期に合わせた適切な運動を選ぶことが最大のポイントです。

時期優先事項主な運動
炎症期(Freezing)痛みの抑制振り子運動・短時間の可動域訓練・アイシング
拘縮期(Frozen)可動域の回復胸・後方ストレッチ・肩甲骨エクササイズ・等尺性収縮
回復期(Thawing)可動域回復+筋力強化積極的可動域訓練・セラバンド・ダンベル・ローテーターカフ強化

今は肩に痛みがない方も、日頃から胸椎・肩甲骨まわりを動かす習慣をつけておくことが予防につながります。


参考文献

Chan, H. B. Y., Pua, P. Y., & How, C. H. (2017). Physical therapy in the management of frozen shoulder. Singapore Medical Journal, 58(12), 685.


執筆:整形外科クリニック勤務の理学療法士(JSPO-AT) 本記事は医学的な診断・治療の代替ではありません。症状がある場合は医師・理学療法士にご相談ください。

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