肩関節周囲炎(五十肩)の代表的な運動療法

肩関節周囲炎

参考文献

Chan, H. B. Y., Pua, P. Y., & How, C. H. (2017). Physical therapy in the management of frozen shoulder. Singapore medical journal58(12), 685.

訳すと「五十肩の管理のための理学療法」というタイトルです。

オープンアクセスの論文なので、ぜひ読んでみて下さい。

肩関節周囲炎について

病態や治療について簡単に解説します。別の記事でも書いているので、下記URLも参照してみて下さい。

肩関節周囲炎の病態と治療法 | みろーずブログ (miroesblog.com)

肩関節周囲炎という名称は、海外ではそれに対応する単語が決まっていないようです。

Frozen shoulder(凍結肩)、Adhesive capsulitis(癒着性関節包炎)などが肩関節周囲炎にあたります。

肩関節周囲炎とは、「既知の肩関節疾患がなく、肩の自動/他動可動域の制限によって特徴付けられる原因不明の状態」とされています。

一般的な症状は、肩関節の可動域制限(特に外旋)、安静時痛、運動時痛、夜間に増悪する痛みがみられます。

患者の病歴、理学所見、X線検査では、運動障害や疼痛を説明するための重要な所見が一般的にはみられないことも特徴の一つです。

肩関節周囲炎は、一次性と、二次性に分類されます。

一次性の肩関節周囲炎について

インスリン依存性の糖尿病(生まれつきのもの)や甲状腺疾患、パーキンソン病など、全身疾患を有する方は、肩関節周囲炎の発症リスクが高いとされています。

二次性の肩関節周囲炎について

肩の疾患(腱板断裂、肩峰下インピンジメント、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性腱板炎)やそれに伴う固定期間があると、二次的に肩関節周囲炎が生じることがあります。

再発はあまりない印象ですが、治療方針が変わってくるため原因疾患の特定は重要です。

五十肩が疑われる場合は、整形外科などの医療機関を受診しましょう。

発症の割合について

一般的に人口の2%から5%が肩関節周囲炎の発生率と推定されています。

総務省の統計によると、日本の人口は2023年1月1日現在で1億2477万人なので、240万から600万人の方が肩関節周囲炎を発症している可能性があります。

統計局ホームページ/人口推計(令和4年(2022年)8月確定値、令和5年(2023年)1月概算値) (2023年1月20日公表) (stat.go.jp)

病期と保存治療について

一般的な保存治療の方法として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、グルココルチコイドの経口投与、関節内注射、理学療法が挙げられます。

薬剤投与では限界があるため、理学療法は重要とされています。

NSAIDs+理学療法、関節内コルチコステロイド+理学療法など、薬剤との併用によって良い成績が得られている研究結果もあるようです。

病期別の症状、理学療法の内容を要約した表を掲載します。

*びまん性とは、病変が比較的均等に広がっている状態のことをいいます。対義語は「局所性」です。

可動域や痛みの経過を説明したがあったので、改変して掲載します。

肩関節周囲炎の治療は、患者さんの症状や病期を考慮することが重要です。

病期別の理学療法について

1. Freezing phase

  • 運動療法
    • コッドマン体操などの振り子運動
    • 仰向けでの肩関節屈曲、内旋、外転運動、それぞれの複合運動
    • 下垂位外旋運動
    • 側臥位での肩関節内転
    • (肩関節伸展、水平内転)

物理療法として、痛みが強い時期には運動前後のアイシングが有効な場合があります。

また、痛みが大きくない場合には温熱療法を併用することで、筋が動きやすくなります。

この時期には痛みを抑えることが最優先なので、短い時間(1~5秒)の可動域訓練から始めることが有効です。

運動療法の例

また、猫背のように肩が前に出た姿勢は肩関節屈曲や外転の制限を引き起こす可能性があるため、姿勢の改善も重要です。

2. Frozen phase

Freezing phaseで実施した運動は、自宅で継続して実施しましょう。

Frozen phaseでは、大胸筋や小胸筋などの胸の筋、肩関節後方の筋のストレッチが重要です。

関節運動を伴わない静的なトレーニングでは、肩の痛みを増悪させないための重要なトレーニングとされています。

運動療法の例

左図のように肩甲骨を後方かつ下方に引き寄せ、胸を前上方に張り出すような運動は、大胸筋や小胸筋のストレッチに加えて肩甲骨内転筋(僧帽筋中部、下部線維、菱形筋など)の基本的なトレーニング方法です。

この時期でも、過度な運動は炎症を強めてしまう可能性があるため、痛みに合わせて実施することが重要です。

3. Thawing phase

回復期では、徐々に可動域の拡大が期待できる期間です。

積極的な可動域訓練や筋力トレーニングを行いましょう。

筋力トレーニングも、等尺性収縮などの静的な収縮から、ゴムバンド、ダンベルへと負荷を徐々に増やしていきましょう。

特に、ローテーターカフ(回旋筋腱板)のトレーニングは重要とされます。

いわゆるインナーマッスルとされ、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4筋からなります。

また、ローテーターカフだけでなく、三角筋や大胸筋、肩甲骨周囲筋のトレーニングも重要です。

まとめ

肩関節周囲炎の理学療法について、代表的な運動を紹介しました。

今は肩に痛みがない若年の方でも、予防として意識的に運動を取り入れましょう。

肩に痛みがある方は、しっかりと診断を受けてから運動を実施することが大切です。

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