【保存版】肩関節周囲炎に対する理学療法評価と治療

夜間痛は、炎症性か非炎症性かを見極めることがまず重要になります。

夜間痛

根本的な原因は腱板断裂、肩峰下滑液包炎、腱板疎部損傷、滑膜炎、上腕二頭筋長頭腱炎ですが、その患者さんが全員夜間痛を発症するわけではありません。

夜間痛の原因:滑膜の炎症、肩峰下圧の上昇、阻血、骨内圧の上昇

滑膜の炎症に対するアプローチ:キシロカイン(局所麻酔)、ケナコルト(ステロイド注射:消炎)

阻血骨内圧の上昇

原因①:流入量増加、流出量阻害

⇒後方tightnessによる影響や、交感神経優位の影響

肩峰下圧の上昇

原因①:骨頭上方化

原因②:烏口上腕靭帯の肥厚、肩峰下滑液包の腫脹、腱板損傷

・⇒組織間(三角筋、棘上筋、肩峰下滑液包炎、CHL)の癒着による肩峰下圧の上昇

・交感神経優位

・副交感神経優位によって血管拡張⇒炎症性サイトカインの流入

・肩峰下圧の上昇によって生じる

・炎症性

・非炎症性

・肩峰下圧の上昇の要因

骨内圧

・評価

熱感がある、動作時の易刺激性が強い(うずくまるような痛み)⇒炎症性

評価

非炎症性、炎症性の見極め

・どんな動きで痛いか

⇒患側を下にした側臥位の時に痛い

⇒内転位保持によって、上方組織(肩峰下滑液包、棘上筋腱とCHL)が伸張

⇒関節内圧上昇と血流量低下による疼痛

⇒非炎症性の可能性が高い

・腫脹がある、熱感がある、日中にも痛い、動作時の易刺激性が強い(うずくまるような痛み)

⇒炎症性の可能性が高い

・腫脹がない、熱感がない、日中も痛くない、動作時の易刺激性がない、一定の動作時痛がある(伸展+外旋による痛みなど)

⇒非炎症性の可能性が高い

・レントゲン:骨頭の上方偏位、肩甲骨の下方回旋

・触診:三角筋のhardnessの有無

・肩甲骨の外転、前傾アライメント

・可動性評価

⇒1st外旋、結帯、内転可動域

1st外旋35°未満、結帯L4

治療

・ポジショニング指導:伸展外旋位を避ける

⇒肘の下に枕を入れて、手とお腹の間にもタオルを入れる、抱き枕を使用する

・屈曲可動域を維持する目的で1日5回くらい動かす

・肩甲骨のアライメント異常:肩甲骨周囲筋に対するアプローチ

・小胸筋の柔軟性改善:徒手操作、肩甲骨モビライゼーション

・三角筋の緊張を落とす

・棘上筋、棘下筋に対するアプローチ

⇒棘上筋に隣接する組織(肩甲上神経、subarcomial fat pad、僧帽筋上部線維、棘下筋)との滑走性

⇒棘下筋に隣接する組織(棘下切痕の脂肪体、菱形筋、小円筋との滑走性)

・棘上筋のリラクゼーション①:肩甲骨挙上位で僧帽筋上部線維を緩めた状態でリリース

・僧帽筋上部線維のリラクゼーション:肩甲帯の挙上ー下制 軽く

⇒落ちない場合は、僧帽筋上部線維と胸鎖乳突筋の間をリリース:副神経のリリース

・棘上筋のリラクゼーション②:筋ストレッチ

⇒前部線維:内転+伸展+外旋で伸張

⇒後部線維:内転+伸展+内旋で伸張

・棘上筋のリラクゼーション③:筋収縮

⇒前部線維:外転+屈曲+内旋で収縮

⇒後部線維:外転+屈曲+外旋で収縮

・肩峰下アーチの直下に対する徒手操作

⇒肩峰下を減圧するようにやや尾側に牽引をかけながら、肩峰下をリリース

・CHLに対するアプローチ

⇒烏口突起基部のリリース、内外旋しながら小結節周囲のリリース(肩甲下筋)、内外転しながら大結節周囲のリリース(棘上筋)

・内外旋ROM改善

⇒骨頭のobiligate translationを止めながら内外旋(内旋時なら後方に押しながら、かつ肩甲窩に対して垂直に圧を加える)

・烏口突起に付着する上腕二頭筋短頭と烏口腕筋の共同腱と肩甲下筋間のリリース

・上腕二頭筋長頭腱ー腋窩神経周囲の癒着はがし:腋窩神経が結節間溝に流入する

⇒三角筋をつまんだ状態で肘屈伸、肩関節内外旋

拘縮期、緩解期

炎症が治まってきたら、痛みの比較的少ない方向から可動域訓練を進めていきます。

経験上、内旋方向から痛みが減少していくことが多く、外旋方向は易刺激性(irritability)が出現することが多いです。

最終域の疼痛を訴える場合には、拘縮性の疼痛を疑います。

評価

1st、2nd、3rdなど、あらゆる動きで可動域を確認し、拘縮のある部位を確認します。

その動きの中で、同じ部位が痛いのか、そうでないのかは重要な所見です。同じ部位に痛みが出ているのであれば、同じ部位が可動域制限の要因になっていると考えられます。

拘縮が残っている場合、obligate translationが起こりやすい状態と言えます。

obligateによって痛みが出ている場合は、その要因に対して滑走性を上げたり、伸張性を改善することが重要になります。

obligateが残っていると痛みが残りやすく、逆にobligateがなければ、痛みはないけど硬くて上がらない、ということになります。

痛みを取りたいのか、可動域を拡大したいのか、その主訴を捉えて治療することが重要です。

・脊柱のアライメント

骨盤後傾ー腰椎後弯ー胸椎後弯ー頭部前方位のアライメントでは、肩関節屈曲制限が生じます。

この場合、骨盤前傾位で挙上、チンインで挙上、胸椎伸展位で挙上、肩甲骨内転位で挙上させた場合にどう変化があるかを確認します。

・烏口肩峰アーチに指を置き、大結節がC-A archに潜り込むかどうか

⇒肩峰下滑液包に癒着がある場合、大結節が潜り込んでいかない

・屈曲時のシュラッグサイン 腕と頭の間に隙間ができない

⇒僧帽筋中部、下部線維の機能不全か、GH関節の拘縮、筋力低下によって生じる

治療

・肩峰下滑液包(腱板の付着部)のリリース:80~120°の、大結節が肩峰下を通過する程度の可動域の場合に実施する

・四つ這いで肩屈曲:おしりを後ろに下げるだけ

・obligateの改善:側臥位で肩水平内転位にして、腕の下に枕をいれる。棘下筋と小円筋の柔軟性改善

⇒小円筋が特に挙上位の可動域拡大には重要

・obligate translationによるインピンジメントの場合

⇒伸展内旋ROMの改善が重要。棘下筋とその下の疎性結合組織の滑走性を出すことで、結果的に後方タイトネスが改善してobligate translationが改善されやすい

・肩甲骨後傾可動性改善:肩甲挙筋、小胸筋ほぐし

・外転可動域制限:90°以上いく人が対象。側臥位で患側を自分の肘に乗せて、外転を動かしながら広背筋、大円筋のリバーステストを実施し、同時に治療も行う。

・棘上筋訓練:側臥位で外転に対して抵抗する。このときに棘上筋を触って意識させる、大結節が肩峰下を通過する様子を触診。

・1st外旋:外旋を伴う挙上を反復していく、筋収縮を用いて外旋方向に誘導する⇒棘下筋のたわむ機能の改善と肩甲下筋の緊張低下、側臥位で肩伸展+内転+外旋⇔屈曲+外転+内旋に誘導

⇒そのまま肩やや屈曲位から外転+外旋で棘上筋の収縮を促す

・僧帽筋下部ex:側臥位でzero positionから肩甲骨を後傾、内転、上方回旋に動かす

・骨頭の後方mobilization

Q&A

・なぜ内旋動作で前方の痛みが出るのか?

⇒原因はCHL由来のものと、obligate translation由来が考えられるため、骨頭を止めて疼痛が減少するならobligate translationとわかる。

・拘縮性の夜間痛

・なぜ外旋35°、結帯L4以上を獲得するのか?

⇒それぞれを獲得した症例では、林らの分類した夜間痛の程度が、軽度の群(50例)は全例で疼痛が消失しているため。

・部分断裂の方が完全断裂よりも夜間痛が多い理由は?

⇒完全断裂では、腱がないおかげで肩峰下圧が上昇しづらい一方、部分断裂では腱があるので、肩峰下圧が上昇しやすい状態にあるためです。

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