理学療法士が五十肩について解説します。
肩関節周囲炎は「四十肩、五十肩」と呼ばれ、PC業務の方に多い疾患です。
30歳未満の方でも、10年後、20年後に肩関節周囲炎を発症する可能性は十分にあります。
診断を受けたことがある方は記事を参考にしていただき、肩の痛みがない人は将来ならないように予防しておきましょう。
参考文献
- Phansopkar, P. (2022). A Review on Current Notion in Frozen Shoulder: A Mystery Shoulder. Cureus, 14(9).
肩関節周囲炎とは?どんな年代に多い?
肩関節周囲炎は、30~60歳代の方に多く生じる疾患の総称で、病期によっては「Frozen shoulder:凍結肩」とも呼ばれます。
凍結肩という名前の通り、肩関節が固まって可動域が制限されている状態を指します。
凍結肩のリスク因子
- 糖尿病
- 甲状腺機能低下
- 腎石症
- パーキンソン病
- 癌
- 肩の怪我
- 喫煙
- 頸部の手術
これらのリスク因子を持つ方は、凍結肩のリスクが10~38%増加するとも言われています。
特に、HbA1Cという、血糖の目安となる値が高いことが原因となる場合があります。
日常生活が制限され、夜間痛も生じる場合があります。
凍結肩の発生率は、世界中で2~5%とも言われます。
男性よりも女性に多いことも疾患の特徴の1つです。
肩関節周囲炎の病態
凍結肩の臨床症状は、肩関節痛、可動域低下です。
靱帯や関節包の拘縮、腱板疎部(けんばんそぶ)と呼ばれる組織が硬くなることがあります。
滑膜生検では、患側の肩にインターロイキン1β、IL-6、IL-8、TNF-αなどのサイトカインのような炎症性物質に加えて、肥満細胞、マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球の存在を示します。
このことから、肩に炎症が起こっていることがわかります。
また、肩の靱帯の一つである烏口上腕靭帯の肥厚は凍結肩の徴候であるとされています。
治療法
- 薬物治療
- 神経ブロック注射
- ステロイド注射
- 麻酔下でのマニピュレーション(関節受動術)
- 手術治療:骨棘、関節包などを切開
- 理学療法
- 寒冷療法(アイシング:炎症を抑えるため)
- 温熱療法(肩を温めて酸素を供給し、周囲の筋の粘弾性を低下させる)
- 運動療法:振り子運動、ストレッチ、筋力トレーニングなど
まずは保存治療を3~6ヶ月程度実施して、効果がなければ手術に移行する場合が多いです。
五十肩の期分け
五十肩の経過は、炎症期、拘縮期、回復期の3つの期間から構成されています。
第1段階:炎症期(Freezing phase)
炎症期は疼痛が強い時期で、可動域制限が進行していく時期です。
この時期の治療では、抗炎症作用のあるステロイド注射や、振り子運動などの軽い運動、痛みを極力抑えて炎症を進行させないような生活指導などが必要となります。
痛みの強い方では、「夜寝ている時に肩の痛みで目が覚める」などの訴えが聞かれます。
その場合、夜寝るときに肘の下とお腹の上に枕を置き、肩に負担がかかりづらいポジションをとることで痛みが和らぐ場合があります。
この時期に肩関節を無理に動かしてしまうと、炎症を強めてしまう場合があります。
肩甲骨周りのトレーニングを積極的に行い、肩関節は可動域を維持しながら痛みを抑えていくようにしましょう。
期間の長さには個人差はありますが、13~36週(約3ヶ月~9か月程度)と言われているようです。
第2段階:拘縮期(Frozen phase)
拘縮期は初期に比べて痛みが軽減しているものの、可動域制限が残っている時期です。
この時期には、炎症期よりも積極的に理学療法を行います。
4~12ヶ月程度と言われています。
理学療法にはMaitland、Mulligan、Kaltenborn、スペンサーテクニックなど様々なテクニックがあり、理学療法士は1人1人の状態に合わせて治療法を選択します。
第3段階:回復期(Thawing phase)
Thawは英語で「溶ける」という意味があります。Thawingで「解凍」という意味です。
回復期は、痛みの軽減と可動域拡大がみられる時期です。
この時期には、痛みに合わせて積極的に動かしましょう。
ステロイド注射を運動療法と併用することで、痛みを抑えて積極的にエクササイズを行う場合もあります。
予防方法
確立された予防方法は現在ありませんが、理学療法士である筆者は脊柱や肩甲骨の可動性と筋力が重要と考えています。
特に、巻き肩の人が多い現代では、腰椎だけでなく、胸椎を動かすような運動、肩甲骨を内転させる運動は重要です。
まとめ
- 肩関節周囲炎の病態、リスク因子、治療法について解説
- リスク因子には糖尿病も含まれるので、糖尿病に対する治療が必要な場合もある
- 治療法は患者さんの段階に応じて選択される
- 痛みがない人は積極的に脊柱、肩甲骨を動かして予防することが重要
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