肩関節周囲炎による結帯動作制限は、肩関節伸展・内旋・内転(または外転)が同時に求められる複合運動で、日常生活動作や上肢機能を著しく制限します。本稿では、
- 肩関節伸展・内旋・内転(外転)という複合動作
- 骨頭の前方移動を伴う
- 肩甲骨の下方回旋・前傾
という3つのポイントを押さえつつ、臨床現場で多く遭遇する症例の評価・原因組織の特定、そして安全かつ効果的なアプローチ方法をご紹介します。
なお、記載の手技やストレッチはあくまでガイドラインであり、患者様一人ひとりの身体所見・疼痛レベル・既往歴を十分に考慮した上で、適切に調整・実践していただくようお願いいたします。
原因組織とメカニズム
・肩甲上腕関節後方組織のtightness:棘下筋、後方関節包の短縮・滑走不全⇒後方の伸長痛、obligate translationによる前方痛
・三角筋前部線維や前方関節包の短縮・滑走不全⇒骨頭が前方に滑らない
・大胸筋の滑走不全⇒内旋筋が縮まらない影響
・三角筋中部線維、肩峰下滑液包、棘上筋など⇒内転結帯の場合、外上方組織の滑走性が重要
・棘上筋後部線維のtightness:棘下筋と同様の作用を持つ
・僧帽筋上部線維、前鋸筋の短縮・滑走不全⇒肩甲骨下方回旋が生じない
・烏口上腕靱帯(CHL)のtightness⇒内旋では短縮するが、肩伸展を制動する組織であること、骨頭の前方可動性にも関与すること、棘下筋まで線維性に連続していること
・烏口腕筋の短縮・滑走不全⇒肩関節伸展+内旋で伸張する組織のため
評価方法
結帯 ルーティン評価
結帯に関わらず、肩関節周囲炎の患者さんでは以下の評価はルーティンで実施しています。
・屈曲可動域
・結帯可動域、結帯動作チェック
・1st外旋、内旋
・伸展可動性
・painful arc sign
・肩甲骨アライメント
・骨頭アライメント
・胸腰椎アライメント
・背臥位アライメント 小胸筋タイトネスチェック:肩峰ー床距離
詳細評価
エラー①:伸展優位になっていないか?
⇒内旋制限がある場合、肩伸展優位の結帯動作になっている場合がある。
⇒その場合、肘を前に持ってこられるか確認
エラー②:過度な骨頭前方位になっていないか?
⇒烏口突起と骨頭を触れた状態で結帯動作を行うことで、骨頭のobligate translationが生じていないかどうかを確認する
⇒obligateがある場合は棘下筋を疑う。加えて、骨頭を固定したときに可動域が減少するかどうかも併せて確認する。
・リターンテスト
・棘下筋のtightness:1st, 2nd, 3rd, rest positionで内旋方向の可動性を確認
・三角筋前部線維:伸展可動域、リターンテスト
・CHLのtightness:下垂位外旋可動域
・後方関節包のtightness:関節を後方にスライドさせて副運動確認
・疼痛部位が烏口腕筋に沿った痛みの場合:烏口腕筋を疑う
・外側の痛み:三角筋下滑液包、腋窩神経が後方関節包の伸長痛を拾っている痛み?
・
治療
・三角筋前部線維のストレッチ:肩関節伸展位で内転
三角筋と二頭筋長頭腱、肩甲下筋腱、烏口突起
・大胸筋周囲の滑走:小胸筋ー大胸筋間を滑らせる
・棘上筋のストレッチ:肩関節軽度伸展位で内転
・三角筋中部線維のストレッチ:クロスボディストレッチ
・棘下筋のストレッチ:ホールドリラックス 主観的に50%の力で外旋方向に5秒等尺性収縮を行い、その後内旋させる
・肩峰下滑液包:皮膚をつまんで少し浮かせて動かすことで、三角筋と腱板の間にある組織を滑走させる
・後方関節包のストレッチ:座位でload and shift、臥位で骨頭後方mobilization、骨頭抑えて側臥位で伸展+内旋
・CHLのストレッチ:伸展+内転+外旋、CHLを前後に摘まみ上げる、頭尾方向にスライド

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