五十肩(肩関節周囲炎)とは?原因・症状・時期別の治療法を理学療法士がわかりやすく解説

肩関節周囲炎

「五十肩」は40代・50代だけの話じゃない

「肩が上がらない」「夜、痛みで目が覚める」——そんな症状を抱えている方、または身近にそういう方がいる方に向けて、五十肩(肩関節周囲炎)について理学療法士の視点からわかりやすく解説します。

五十肩は中高年に多い疾患ですが、30代でも発症することがあり、放置すると慢性化しやすいという特徴があります。正しい知識を持つことで、早期対処と予防につながります。

この記事でわかること:

  • 五十肩の原因とリスク因子
  • なぜ肩が固まるのか(病態)
  • 治療の選択肢
  • 時期によって変わるケアの方法
  • 痛みがない人が今からできる予防

注意事項: この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療の代わりとなるものではありません。症状がある場合は専門の医師・理学療法士にご相談ください。


肩関節周囲炎(五十肩)とは?

肩関節周囲炎は、30〜60代に多く発症する肩の痛みと可動域制限を主症状とする疾患の総称です。

病状が進むと肩関節が凍りついたように固まることから、英語では「Frozen shoulder(凍結肩)」とも呼ばれます。世界的な発生率は2〜5%とされており、男性より女性に多い傾向があります。

日常生活での支障(腕が上がらない・洋服が着られない)に加え、夜間痛が生じるケースも多く、睡眠の質にも影響します。


発症しやすい年代とリスク因子

どんな人がなりやすい?

肩関節周囲炎は30代未満でも、10〜20年後に発症するリスクがあります。特に以下のリスク因子を持つ方は、発症リスクが10〜38%増加するとされています。

リスク因子補足
糖尿病HbA1c(血糖値の指標)が高いと特にリスク増
甲状腺機能低下症ホルモンバランスが肩関節に影響
腎石症代謝異常との関連が指摘されている
パーキンソン病姿勢・動作制限が肩に二次的影響を与える
治療の影響で肩に制限が出るケースも
肩の外傷歴過去の怪我が引き金になることがある
喫煙血流低下が組織修復を妨げる
頸部の手術歴神経・血流への影響

PC作業が多い方も、巻き肩や猫背による肩甲骨まわりの動きの低下から発症しやすいとされています。


なぜ肩が固まるのか(病態)

肩関節周囲炎では、主に以下の変化が肩関節内で起こります。

1. 炎症性サイトカインの増加 滑膜(関節の内側を覆う組織)にインターロイキンやTNF-αなどの炎症性物質が増加します。これが痛みの直接的な原因です。

2. 靱帯・関節包の拘縮 炎症が繰り返されることで、関節包や靱帯(特に烏口上腕靭帯)が厚く硬くなります。これが可動域制限の主な原因です。

3. 腱板疎部の硬化 肩関節の腱板と呼ばれる組織の一部(腱板疎部)が硬化することも、可動域低下に関わります。


治療の選択肢

五十肩の治療は、まず保存治療を3〜6ヶ月継続し、効果が不十分な場合に手術を検討するという流れが一般的です。

カテゴリ治療法
薬物治療消炎鎮痛薬(内服・外用)
注射ステロイド注射、神経ブロック注射
徒手療法麻酔下での関節受動術(マニピュレーション)
手術骨棘・関節包の切開(保存治療が無効な場合)
理学療法寒冷療法(炎症期)、温熱療法、運動療法(振り子運動・ストレッチ・筋力強化)

理学療法にはMaitland・Mulligan・Kaltenbornテクニックなど様々な徒手療法があり、理学療法士が患者の状態・病期に合わせて選択します。


五十肩の3つの時期と時期別ケア

五十肩の経過は「炎症期 → 拘縮期 → 回復期」の3段階で進みます。時期によって適切なケアが異なるため、自己判断で動かしすぎたり安静にしすぎたりしないことが重要です。

第1段階:炎症期(Freezing phase)|期間:約3〜9ヶ月

この時期の特徴

  • 痛みが最も強い時期
  • 可動域制限が進行していく
  • 夜間痛が出やすい(夜中に痛みで目が覚めることも)

この時期のケア

  • 安静を保ちつつ、痛みの範囲内で軽い振り子運動を継続
  • 肩関節を無理に動かすと炎症が悪化するため、ストレッチの強度は控えめに
  • 肩甲骨まわりのトレーニング(肩関節への直接負荷を避けながら)
  • 夜間痛がある場合は、肘の下とお腹の上に枕を置き、肩への負担を減らす姿勢で就寝

第2段階:拘縮期(Frozen phase)|期間:約4〜12ヶ月

この時期の特徴

  • 痛みは炎症期より軽減
  • 肩の固さ(可動域制限)が残る
  • 日常生活の支障が続く

この時期のケア

  • 痛みが落ち着いているため、積極的な理学療法が中心
  • 関節可動域改善を目的としたストレッチ・徒手療法
  • Maitland、Mulligan、Kaltenbornなどのテクニックを理学療法士が状態に合わせて選択

第3段階:回復期(Thawing phase)|期間:個人差あり

この時期の特徴

  • 痛みが軽減し、可動域が徐々に広がってくる
  • 「Thawing(解凍)」という名前の通り、固まっていた肩が溶けはじめる時期

この時期のケア

  • 痛みの範囲で積極的に動かす
  • ステロイド注射と運動療法を組み合わせて可動域回復を促すケースも
  • 筋力の回復トレーニングを本格的に開始

予防方法

五十肩に対して確立された予防法は現時点では存在しませんが、理学療法士の視点から脊柱と肩甲骨の柔軟性・筋力の維持が重要と考えています。

特に現代人に多い巻き肩・猫背の姿勢では、胸椎の動きが低下し、肩関節への負担が増加します。

今からできる予防習慣:

  • 胸椎(背骨の胸の部分)を動かすストレッチを週3回以上
  • 肩甲骨を背骨に寄せる(内転)運動を日常に取り入れる
  • 長時間同じ姿勢を続けない(デスクワーク中は30〜45分に1回、肩まわりを動かす)

まとめ

ポイント内容
対象年代30〜60代が多いが30代以下でも発症あり
主な症状肩の痛み・可動域制限・夜間痛
リスク因子糖尿病・喫煙・外傷歴・デスクワークなど
治療の基本保存治療(理学療法+注射)を3〜6ヶ月が先
時期別ケア炎症期は安静保持、拘縮期から積極的な理学療法
予防胸椎・肩甲骨の可動性を日常的に維持する

五十肩は適切な時期に適切なケアを行えば、多くのケースで回復が見込めます。「少し痛いだけだから」と放置せず、早めに専門職に相談することをおすすめします。


参考文献

Phansopkar, P. (2022). A Review on Current Notion in Frozen Shoulder: A Mystery Shoulder. Cureus, 14(9).


執筆:整形外科クリニック勤務の理学療法士(JSPO-AT) 本記事は医学的な診断・治療の代替ではありません。症状がある場合は医師・理学療法士にご相談ください。

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