ゴルファーの腰痛予防|ハーフニーリング・ケーブルチョップで骨盤を止める

ゴルファーの腰痛予防|ハーフニーリング・ケーブルチョップで骨盤を止める 理学療法

ゴルファーの腰痛予防に、体幹トレーニングを入れる。ここまではよくある流れです。

問題は、何に抵抗させるのかです。

この記事では、ハーフニーリング(片膝立ち)でのケーブルチョップを取り上げます。狙いはひとつです。

後ろ脚の大殿筋で骨盤を中間位に保ったまま、体幹の回旋に抵抗する。

股関節を回す練習ではありません。ここを取り違えると、種目の選び方も評価もずれます。

対象読者: PT・トレーナーなど、ゴルファーの腰痛に関わる専門職
前提: 右打ちで書きます。リード側は左、トレイル側は右です。左打ちは左右を読み替えてください。


ゴルファーの腰痛はどう起きるか

回旋を、股関節ではなく腰椎が受けている

腰椎は、椎間関節の向きの関係で回旋の可動域が小さい部位です。スイングの回旋を受け持つのには向いていません。

それでもスイングでは、大きな回旋が繰り返されます。

Cole と Grimshaw(2016)のレビューは、現代的なスイングの特徴として、バックスイングで骨盤の回旋を抑えながら胸郭の回旋を大きくすることを挙げています。ヘッドスピードには有利な動きです。一方で、腰椎がその力を安全に受け止められないのではないか、という議論も紹介しています。

ただし同じレビューは、スイングと腰痛のつながりを直接調べた研究は少ないとも述べています。メカニズムは、まだ確定していません。

リード側股関節の内旋制限

それでも、繰り返し報告されている所見があります。リード側股関節の内旋制限です。

研究 対象 結果
Vadら(2004) プロの男性ゴルファー42名(33%に腰痛既往) 腰痛既往と、リード股関節の内旋の低下・FABERE(パトリック)テストでの距離・腰椎伸展の低下に有意な関連。非リード側の股関節には差なし
Murrayら(2009) アマチュアゴルファー(腰痛28名・対照36名) 腰痛群でリード股関節の内旋が小さい(他動 21.1° vs 31.1°、自動 21.5° vs 28.1°、股関節屈曲0°で測定)。非リード側と外旋には差なし
Hamadaら(2023) ゴルファー(交差試験) リード股関節へのフォームローラー+動的ストレッチで、スイング中の内旋角度が増加。介入群ではリード股関節の内旋と下位腰椎の回旋に中等度の負の相関(r = −0.522)

どちらもリード側だけ、という点が共通しています。

Edwardsら(2020)のレビューも、リード股関節の回旋が足りないと、バックスイングやフォロースルーの回旋を腰椎が肩代わりする可能性がある、と整理しています。

ただし、VadとMurrayは横断研究です。Murrayらも、因果関係は言えないと明記しています。「内旋制限が腰痛を起こす」とまでは言えません。 関連がある、という段階です。

インパクトからフィニッシュ:骨盤の前傾と腰椎の伸展

もうひとつは、矢状面の問題です。

Edwardsら(2020)は、フォロースルーで腰椎が過伸展する姿勢を「リバースC」として取り上げ、腰椎への圧縮や前後方向の剪断力が増えると整理しています。望ましい骨盤の動きとしては、アドレスで前傾、インパクトで後傾、フォロースルーで前傾、という記述を紹介しています。

つまり、フォロースルーで骨盤が前傾すること自体は、正常な動きとして扱われています。

問題は、その前傾と腰椎の伸展が止まらず、リバースCまで進むことです。インパクトからフィニッシュでは、リード股関節が回旋の軸になります。この局面で骨盤の前傾を適切な量で止められないと、回旋と伸展が腰椎に集まります。

予防の鍵としての大殿筋

骨盤を止める筋として、まず挙がるのが大殿筋です。

研究 内容
Bechlerら(1995) 競技ゴルファー16名のワイヤ筋電図。ダウンスイングで骨盤の回旋を始動させたのは、トレイル側の股関節伸展筋・外転筋と、リード側の大内転筋
Edwardsら(2020) バックスイングでは大殿筋が骨盤を安定させると整理。一般の腰痛患者で、大殿筋の持久力が低いという報告も紹介

【私見】 予防で大殿筋に求めたいのは、骨盤を動かす求心性の出力よりも、体幹に回旋の負荷がかかっている間、骨盤を中間位に留めておく等尺性・遠心性の制御だと考えています。
ただし、大殿筋を鍛えるとゴルファーの腰痛が減る、と直接示した研究を、私は確認できていません。ここは仮説として読んでください。


なぜ、ハーフニーリング・ケーブルチョップなのか

狙いは「抗回旋」

ケーブルチョップでは、腕は斜め上から斜め下へ動きます。しかし体幹と骨盤は、正面を向いたまま動かしません。

ケーブルは、手をマシンのほうへ引き戻そうとします。つまり体幹を、マシンの方向へ回旋させ、上へ伸展させようとします。

この力に負けないことが課題です。 特に戻す局面で、回旋と伸展の両方に抵抗させます。リバースCで問題になる方向と同じです。

後ろ脚の大殿筋が、骨盤を中間位に留める

ハーフニーリングでは、後ろ脚の股関節が伸展位になります。

このとき、腸腰筋や大腿直筋といった股関節屈筋は伸ばされます。屈筋が硬ければ、骨盤は前傾方向へ引かれ、腰椎の伸展で帳尻を合わせることになります。

これに対抗するのが、後ろ脚の大殿筋です。大腿骨が固定されている状態で大殿筋が働くと、骨盤は後傾方向へ引かれます。 骨盤を中間位に保てます。

つまりこの肢位では、後ろ脚の大殿筋が骨盤を留めておけるかどうかが、そのまま問われます。

股関節を回旋する練習ではない

ここは、はっきり書いておきます。

片膝立ちでは、股関節の回旋はほとんど起きません。 後ろ膝は床に、前足は床に固定されているうえ、骨盤も正面を向けたまま動かさないためです。

この種目で鍛えるもの この種目では鍛えないもの
体幹の回旋・伸展に抵抗する力(抗回旋) 股関節の内旋・外旋(回旋を股関節で受ける能力)
後ろ脚の大殿筋による骨盤の保持 回旋のパワー(速度)
骨盤の上に胸郭を乗せたまま、腕を動かす制御 リード股関節の内旋可動域

リード股関節の内旋制限がある選手に、この種目だけを処方しても、内旋可動域は変わりません。 可動域は可動域で、別に手当てが要ります。

回旋を股関節で受ける練習は、後半のプログレッションと、ゴルフの記事のランドマインローテーションで扱っています。

片膝立ちにする理由:下肢の代償を減らす

立位でチョップを行うと、足関節・膝・体重移動で、骨盤と体幹の崩れをごまかせてしまいます。

片膝立ちにすると、その逃げ道が減ります。さらに前足と後ろ膝を一直線に並べると、支持基底面が狭くなります。

条件 起きること
片膝立ち 足関節・膝の戦略が使えない。崩れが骨盤と体幹に出る
支持基底面を狭くする 骨盤が回る、横に流れる、といった代償がすぐ見える

観察しやすい、ということでもあります。評価としても使えます。


導入前の評価

評価 見たいこと この種目への影響
リード股関節の内旋可動域 回旋の受け皿があるか 不足していれば、可動域の手当てを並行する
座位での骨盤と体幹の分離回旋 骨盤を止めて胸郭だけ回せるか できなければ、チョップでも骨盤が回る
片脚ブリッジの持久性 大殿筋で骨盤を保持し続けられるか 不足していれば、後ろ脚の大殿筋が抜ける
疼痛の局面と方向 伸展で出るか、屈曲で出るか 処方の可否と、範囲の決め方

リード側股関節の内旋可動域

腹臥位(股関節屈曲0°、膝屈曲90°)と、座位(股関節屈曲90°)の両方で測ります。スイング中の股関節は伸展位から屈曲位まで動くため、片方だけでは見落とします。

見るのは左右差です。 Murrayら(2009)の数値(腰痛群 21°・対照群 31°、他動)は群の平均であって、カットオフ値ではありません。目安にとどめてください。

座位での骨盤と体幹の分離回旋

  1. ベンチに座り、両足を床につけます
  2. 胸の前で腕を組むか、クラブを胸に当てて保持します
  3. 骨盤を正面に向けたまま、体幹を左右に回旋させます
確認すること 崩れているサイン
骨盤 体幹と一緒に回る、座面上で横にずれる
体幹 回旋に側屈や屈曲が混ざる
左右差 片側だけ回旋が小さい

Tsaiら(2010)は、腰痛既往のあるゴルファーで、非リード側への体幹回旋角度が小さかったと報告しています。右打ちなら右回旋、つまりバックスイングの方向です。左右を必ず比べてください。

片脚ブリッジの持久性

  1. 背臥位で片膝を立て、反対側の脚は膝を伸ばして浮かせます
  2. 立てた脚で骨盤を持ち上げ、体幹から大腿までを一直線にします
  3. その位置を保つ、または反復して、骨盤が落ちる・回るところまで行います
確認すること 崩れているサイン
骨盤 浮かせた脚の側へ落ちる、回旋する
腰椎 骨盤を上げるときに腰が反る
筋 大殿筋より先に、ハムストリングスが攣りそうになる

【私見】 最後のサインは、骨盤を持ち上げる仕事をハムストリングスが主に引き受けている可能性を考えています。大殿筋が十分に働いていないかもしれない、という手がかりとして使っています。基準値は置かず、左右差と、再評価での変化を見ています。

痛みは、どの局面で、どちらの方向で出るか

局面 起きている動き 見方の例
バックスイング トレイル側への回旋、側屈 回旋そのもので出るか
インパクト 側屈と回旋の組み合わせ 動きの組み合わせで出るか
フィニッシュ 回旋の最終域、腰椎伸展(リバースC) 伸展で出るか

あわせて、伸展と屈曲のどちらで誘発されるかを確認します。

  • 伸展で誘発される場合:この種目の狙いと方向が合っています。戻す局面の抗伸展が、そのまま課題になります
  • 屈曲で誘発される場合:アドレスでの前屈姿勢が関わっている可能性があります。Lindsay と Horton(2002)は、腰痛のあるプロゴルファーでは、アドレス時に脊柱をより屈曲させる傾向があり、バックスイングでの左側屈が有意に大きかったと報告しています(各群6名と小規模)。チョップの引き終わりで体幹が屈曲しないよう、範囲を短くします

下肢の神経症状、夜間痛、安静時痛がある場合は、運動の前に医師の評価が必要です。


実施方法

セッティング

  1. ケーブルを頭より高い位置にセットします
  2. マシンに対して横向きになり、片膝立ちになります。マシン側の脚を前に立て、遠い側の膝を床につきます
  3. 前足と後ろ膝を、ほぼ一直線上に並べます。支持基底面を狭くするためです。膝の下にはマットを敷きます
  4. 後ろ脚は股関節伸展位にし、大殿筋を軽く締めて骨盤を中間位にします
  5. 胸郭を骨盤の真上に乗せます。肋骨が前に開かない位置です
  6. ロープを両手で持ちます。スタートは、マシン側の高い位置です

右打ちで、リード側(左)を後ろ脚にしたい場合は、マシンを右側に置き、右膝を立てて、左膝をつきます。

動作

  1. 息を吐きながら、肋骨を下げ、後ろ脚の大殿筋を締めます
  2. ロープを、高い位置から後ろ脚側の腰の前へ、斜め下に引きます。手前の手(マシンから遠い側)は引き、奥の手(マシン側)は押します
  3. ゆっくり戻します。 ケーブルに引き戻される局面です。ここで体幹が回る・反るのを止めます
  4. 最初から最後まで、骨盤と体幹は正面を向いたままです
項目 目安
回数・セット 左右各8〜12回 × 2〜3セット
速度 低速。例:2秒で引き、3秒で戻す
負荷 最後の数回まで、代償なく行える重さ

回数より、フォームが保てた回数を数えてください。 代償が出た時点で、そのセットは終了です。

ケーブルがない場合

ゴムバンドを、ドア枠や柱の高い位置に固定すれば代用できます。

ドアに挟む場合は、ドアが自分のほうへ開かない向きで固定してください。バンドが外れると顔に当たります。

ケーブルと違い、バンドは伸びるほど抵抗が強くなります。 引き終わりで負荷が最大になるため、そこで崩れやすくなります。

痛みがある時期

疼痛がある時期は、メディシンボールの回旋投げのような回旋パワー系の種目は避けます。 低速の種目と、等尺性の種目を中心にします。

この種目なら、次のように調整できます。

  • 引き終わりの位置で止め、5〜10秒保持する(呼吸は止めない)
  • 往復させる場合は、さらに速度を落とし、範囲を短くする
  • 症状が出る範囲の手前で止める

代償動作と修正キュー

代償 見え方 修正キュー・方法
腰椎伸展 戻す局面で肋骨が開き、腰が反る。胸が天井を向く 「息を吐いて、みぞおちを骨盤のほうへ下ろす」。負荷を下げる。スタート位置を低くして、上の範囲を削る
骨盤の回旋 引くときに骨盤が引く方向へ回る。戻すときにマシン側へ回る 「ベルトのバックルを正面に向けたまま」。両側の上前腸骨棘に手やスティックを当て、動いたら分かるようにする。速度を落とす
後ろ脚の股関節屈曲(大殿筋の抜け) お尻が後ろへ引け、後ろ脚の大腿が斜めになる 「後ろ脚のお尻を締めて、股関節を前へ押し出す」。大腿を床と垂直に。大殿筋に触れて収縮を確認させる。股関節屈筋が硬い場合は、先にストレッチを入れる
支持基底面の拡大 前足が外へ逃げる。後ろ膝が横へずれる 「前足と後ろ膝を、一本の線の上に」。床にテープを貼る。保てない場合は、少し広い幅から始めて段階的に狭くする

4つのうち、最初に出る代償を記録しておいてください。 次回の評価で、どれが先に消えたかを追えます。

【私見】 理学療法士10年の臨床で、最もよく見るのは後ろ脚の大殿筋の抜けです。お尻が少し後ろへ引けるだけで、骨盤は前傾し、腰椎の伸展が始まります。腰が反っているように見える選手では、腰より先に、後ろ脚の股関節を見ています。


プログレッション

段階 種目 加わる課題
0 片膝立ちでの等尺性保持 疼痛期・導入初期
1 ハーフニーリング・ケーブルチョップ 骨盤を止めたまま、腕を動かす
2 スプリットスタンスでの立位チョップ 両脚の足関節・膝・股関節が関わる
3 アドレス姿勢での、股関節の内旋・外旋を伴うチョップ 回旋を股関節で受ける

スプリットスタンスでの立位チョップ

後ろ膝を床から離し、前後に脚を開いた立位で行います。

床についていた膝がなくなるため、後ろ脚の膝と足関節でも姿勢を支えることになります。立位なので、代償の選択肢も増えます。片膝立ちで消えていた代償が、ここで再び出ないかを見ます。

アドレス姿勢で、股関節の内旋・外旋を伴うチョップ

ここで初めて、股関節の回旋を入れます。

  1. アドレス姿勢をとります。股関節から前傾し、膝は軽く曲げ、脊柱は中間位です
  2. トレイル側の高い位置から、リード側の低い位置へ引きます
  3. 骨盤と体幹をひとかたまりにして、大腿骨の上で回します。リード股関節は内旋、トレイル股関節は外旋に入ります
  4. 腰椎と骨盤の位置関係は変えません。 体幹は固定、回るのは股関節です

この段階は、リード股関節の内旋可動域が前提です。 可動域が足りなければ、足りない分を腰椎がひねって補います。評価で内旋制限が残っている場合は、ここへ進めません。

考え方は、ゴルフの記事のランドマインローテーションと同じです。骨盤を止める段階1・2と、骨盤ごと回して股関節で受ける段階3は、狙いが逆です。 どちらも要ります。

次の段階に進む基準(例)

  • 規定の回数・セットを、4つの代償なしで行える(動画で確認する)
  • 実施中も、翌日も、症状の増悪がない
  • 左右で、動きの質に明らかな差がない
  • 段階3へ進む場合は、リード股関節の内旋可動域に、評価で明らかな制限がない

【私見】 これらは私が使っている目安で、妥当性が検証された基準ではありません。負荷を上げる前に、まず段階を上げないことを優先しています。重さを増やすと、代償がいちばん先に出るためです。

回旋パワー系の種目(メディシンボールの回旋投げなど)は、ここまでの段階を症状なく通過してから検討します。


まとめ

項目 要点
メカニズム リード股関節の内旋制限と、フィニッシュでの腰椎伸展。どちらも関連であって、因果は未確定
種目の狙い 後ろ脚の大殿筋で骨盤を中間位に保ち、体幹の回旋に抵抗する(抗回旋)
書いてはいけないこと 股関節で回旋する練習。片膝立ちでは、股関節はほとんど回らない
片膝立ちにする理由 下肢の代償を減らし、崩れを骨盤と体幹に出させる
評価 リード股関節の内旋、座位の分離回旋、片脚ブリッジの持久性、疼痛の局面と方向
実施 左右各8〜12回 × 2〜3セット、低速。戻す局面が本番
疼痛期 回旋パワー系は避け、低速・等尺性で
次の段階 スプリットスタンス → アドレス姿勢で股関節の回旋を入れる

参考文献

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  • Vad VB, Bhat AL, Basrai D, Gebeh A, Aspergren DD, Andrews JR. Low back pain in professional golfers: the role of associated hip and low back range-of-motion deficits. Am J Sports Med. 2004;32(2):494-497.

注意事項

本記事はリハビリテーションの一例を紹介するものであり、個別の症状や状況に応じた治療・指導を保証するものではありません。

掲載内容は一般的な例示に基づいており、すべての症例に適用できるわけではないため、実際のトレーニングの選択と実施にあたっては、必ず専門医や理学療法士等の医療専門家と十分に相談の上で行ってください。

なお、本記事の内容に基づく自己判断や独断での実施により生じた事故や健康被害について、当方は一切の責任を負いかねます。


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