足底腱膜炎のリハビリ|足だけ見ても変わらないとき

足底腱膜炎のリハビリ|足だけ見ても変わらないとき 理学療法

足底腱膜炎に対して、足底腱膜だけを触っていても戻ってくる症例があります。

ストレッチも指導した。インソールも入れた。それでも朝の第一歩が痛い。

この記事では、まず効果が確かめられているものを押さえ、そのうえでそれでも変わらないときに足の外へ視野を広げる手順を整理します。

対象読者: 足部を診る理学療法士・アスレティックトレーナー


まず、確かめられているものから

自分の観察を持ち出す前に、ここを外さないようにします。

Morrisseyら(2021、BJSM)は、51件の試験・4,351例をシステマティックレビューし、専門家への聞き取りと患者調査を合わせて診療の指針をまとめました。

効果の証明に足る規模の研究があったのは、10の介入のうち9試験です。そのなかで一致が見られたのは2つでした。

介入 短期の「朝の第一歩の痛み」への効果
足底腱膜のストレッチ SMD 1.21(95%CI 0.78〜1.63)
テーピング SMD 0.47(95%CI 0.05〜0.88)

そして臨床推論として、これらに患者教育と靴の助言を組み合わせたものを、セルフマネジメントの中核に据えることが推奨されています。

腱膜「特異的」ストレッチであること

ここは区別が要ります。

DiGiovanniら(2003、JBJS)は、10か月以上続く慢性足底腱膜炎の101例を、腱膜特異的ストレッチ群とアキレス腱ストレッチ群に無作為に割り付けました。

アキレス腱を伸ばすだけでは足りない、というのがこの研究の出発点です。腱膜そのものを伸張する肢位——足趾を伸展させて腱膜を張る——が必要だという仮説でした。

2年追跡した続報(DiGiovanniら 2006)まで含めて、腱膜特異的ストレッチが支持されています。

高負荷の筋力トレーニングは「速い」

Rathleffら(2015、Scand J Med Sci Sports)は、超音波で診断を確認した48例を2群に分けました。

群 内容
ストレッチ群 インソール+毎日の腱膜特異的ストレッチ
筋力群 インソール+1日おきの高負荷漸増筋力トレーニング

筋力トレーニングの中身は、足趾の下にタオルを入れた片脚カーフレイズです。足趾を伸展させた状態で踵を上げる。

結果はこうでした。

時点 差
3か月 筋力群のFFIが29点低い(95%CI 6〜52、P=0.016)
1・6・12か月 差なし(P>0.34)

速く良くなるが、最終的には同じところに着く。 ここは正確に伝えたほうがいいと思います。「筋トレのほうが優れている」ではありません。


それでも戻ってくるとき

ここからが本題です。上をやっても変わらない、あるいは治っても再発する症例では、足底腱膜にかかる張力を増やしている上流を探します。

足の側面図2枚の比較。拇趾が伸展できる側は足底腱膜が巻き取られて内側縦アーチが上がり、拇趾伸展が足りない側はアーチが落ちて踵骨の付着部が引かれる

① 拇趾の伸展制限

離地のとき、拇趾MTP関節は伸展します。ここが動かないと、足関節の背屈で帳尻を合わせることになります。

拇趾伸展の可動性低下
  → 離地時の背屈可動性が過剰に要求される
  → 踵骨が底屈方向へ引かれる
  → 足底腱膜の付着部に伸長ストレス

拇趾が動かないぶんを、踵が払っている構図です。

② 股関節伸展の制限

こちらは二手に分かれます。

股関節伸展制限
  ├→ 膝屈曲位での蹴り出し → 背屈の要求が増える
  └→ 股関節の外転・外旋で代償 → toe-out を誘発

どちらの経路でも足部に負荷が回ります。 背屈を余計に使うか、つま先を外へ逃がすか。

③ 距骨の外旋と knee-in toe-out

上の代償が続けば、距骨は外旋位をとりやすくなります。膝が内に入り、つま先が外を向く形です。

このとき距骨下関節は回内し、内側縦アーチが落ちます。

背屈制限そのものの切り分けは、別記事にまとめています。

→「足関節背屈制限|制限因子の見分け方と距骨外旋による代償」


左右差を見る

ここからは私の見方です。文献の裏づけがある話ではありません。

左側の症例で、肋骨を見る

左の足底腱膜炎では、左の肋骨が外旋している影響が大きいと考えています。

肋骨の位置が変われば、その上の体幹の向きが変わります。体幹の向きが変われば、下肢が地面に対してどの向きで接地するかも変わります。

【注意】 左右非対称を前提に姿勢を捉える考え方は、特定の学派に由来するもので、理学療法の合意事項ではありません。 用語体系も通常のものとは異なります。ここでは「左右で条件が違う」という観察の部分だけを扱います。

肋骨の位置そのものへの介入は、別記事で扱っています。

→「リブフレア(肋骨の開き)の改善|壁を使った呼吸エクササイズ」

股関節内旋制限が、逃げ場を決める

ここが要点です。

股関節の内旋可動域が落ちていると、外旋方向へ逃げやすくなります。

内旋で吸収できる範囲が狭ければ、身体は残った方向を使います。骨盤が回る、あるいは下肢全体が外を向く。

左肋骨の外旋
  → 体幹の向きが変わる
  → 左下肢が外旋方向に置かれやすい
  → 股関節内旋制限があると、内旋で戻せない
  → 外旋位が固定される

この構図は、歩行の立脚終期でも同じことが起きます。立脚側の股関節は内旋方向に動く必要があるので、そこが足りないと水平面の代償が出ます。

→「ターミナルスタンスで下腿が外旋する|「どこで」起きているかを分ける」

行き着く先が、内側縦アーチの低下

下肢が外旋位に置かれると、距骨下関節は回内方向に入ります。

下肢の外旋位
  → 距骨下関節の回内
  → 内側縦アーチの低下
  → 足底腱膜が伸ばされ続ける

片側だけの足底腱膜炎で、足部に明らかな原因が見つからないとき。 私はここを見に行きます。

【私見】 この連鎖は仮説であって、検証されたものではありません。 「左だから肋骨」と決め打ちする使い方は危険です。

使い方としては、足部の所見だけで説明がつかないときに、確認する順路を1本増やすというくらいが適当だと思っています。

実際の確認は単純です。左右の股関節内旋可動域を測って、左が明らかに少ないか。 ここが出発点になります。


トレーニング

30°内転位でのカーフレイズ

後脛骨筋の機能を上げる狙いです。

  • 足部を30°ほど内転位に置いてから踵を上げる
  • アーチを保ったまま挙上する。母趾側へ乗ること
  • 落とすときもアーチを潰さない

内転位に置くことで、後脛骨筋が働きやすい方向に条件を整えています。 真っ直ぐのカーフレイズより狙いが絞れます。

【注意】 Rathleffらの高負荷トレーニングは足趾の下にタオルを入れた片脚カーフレイズで、狙いは腱膜そのものへの負荷です。こちらの30°内転位は後脛骨筋が狙いで、別物です。混ぜないでください。

ランジ(荷重を肩に載せて)

前後の脚で、狙いが分かれます。

狙い
踏み込み脚 knee-in を抑える。 膝が内へ入らない範囲で下ろす
蹴り足 股関節伸展を出す。足関節を固めて、過度な背屈を使わせない

肩に荷重を載せるのは、体幹の位置を先に決めてしまうためです。手に持つと上肢で逃げられます。

蹴り足側で「足関節を固める」というのが、この種目の要点です。股関節伸展制限を足関節の背屈で払っている人に、その逃げ道を塞いだ状態で伸展を要求します。


まとめ

論点 内容
まず押さえる 腱膜特異的ストレッチ(SMD 1.21)とテーピング(0.47)+教育・靴(Morrissey 2021)
ストレッチの種類 アキレス腱ではなく、足趾を伸展させて腱膜を張る肢位(DiGiovanni 2003)
高負荷筋力 3か月時点で速いが、12か月では差なし(Rathleff 2015)
上流① 拇趾伸展制限 → 背屈の要求増 → 踵骨底屈 → 付着部の伸長
上流② 股関節伸展制限 → 膝屈曲位の蹴り出し、または外転外旋でtoe-out
上流③ 距骨外旋、knee-in toe-out → 内側縦アーチ低下
左右差(私見) 左肋骨外旋+股関節内旋制限で外旋位が固定 → アーチ低下
確認の入口 左右の股関節内旋可動域を測る
トレーニング 30°内転位カーフレイズ(後脛骨筋)、ランジ(knee-in抑制と股関節伸展)

足底腱膜は、上で起きたことの受け皿になっていることがあります。そこだけ触っても戻るのは、そのためだと考えています。


参考文献

  • Morrissey D, Cotchett M, Said J'Bari A, Prior T, et al. Management of plantar heel pain: a best practice guide informed by a systematic review, expert clinical reasoning and patient values. Br J Sports Med. 2021;55(19):1106-1118.
  • DiGiovanni BF, Nawoczenski DA, Lintal ME, Moore EA, et al. Tissue-specific plantar fascia-stretching exercise enhances outcomes in patients with chronic heel pain. A prospective, randomized study. J Bone Joint Surg Am. 2003;85(7):1270-7.
  • DiGiovanni BF, Nawoczenski DA, Malay DP, Graci PA, et al. Plantar fascia-specific stretching exercise improves outcomes in patients with chronic plantar fasciitis. A prospective clinical trial with two-year follow-up. J Bone Joint Surg Am. 2006;88(8):1775-81.
  • Rathleff MS, Mølgaard CM, Fredberg U, Kaalund S, et al. High-load strength training improves outcome in patients with plantar fasciitis: a randomized controlled trial with 12-month follow-up. Scand J Med Sci Sports. 2015;25(3):e292-300.
  • Whittaker GA, Munteanu SE, Menz HB, Bonanno DR, et al. Corticosteroid injection for plantar heel pain: a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2019;20(1):378.

注意事項

本記事は足底腱膜炎の評価と運動療法の考え方を整理したものであり、個別の症例に対する診断・治療を保証するものではありません。

「左右差を見る」の節は、検証された知見ではなく私の臨床上の見方です。 仮説として扱ってください。

踵の痛みには、踵骨の疲労骨折、足根管症候群、脂肪体の萎縮など、足底腱膜炎以外の原因もあります。痛みが続く場合は整形外科を受診してください。

実施にあたっては、医師および担当の理学療法士の指示に従ってください。本記事の内容に基づく自己判断により生じた事故や健康被害について、当方は一切の責任を負いかねます。


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