臨床ノート

膝の屈曲・伸展制限は半月板の動きから考える|関節包の柔軟性、脛骨回旋での後方誘導、後方関節包

膝の屈曲・伸展制限を、半月板の動きから整理しました。半月板は曲げ伸ばしで前後に動き、関節包を介して大腿骨と脛骨につながっています。屈曲では脛骨の回旋で半月板を後方へ誘導し、伸展では後方関節包を緩める。内側半月板の逸脱(MME)とzone 3の関係も、研究と仮説を分けて書いています。

膝の屈曲・伸展制限を見るとき、私は半月板が動けているかを考えます。

半月板は、膝の曲げ伸ばしに合わせて前後に動きます。そして、関節包を介して大腿骨と脛骨につながっています。関節包が硬ければ、半月板は動けません。半月板が動けなければ、曲げ伸ばしの終わりで引っかかります。

この記事では、次の4つを整理します。

  1. 半月板は、曲げ伸ばしでどれだけ動くか
  2. 半月板は、どこで関節包とつながっているか
  3. 屈曲制限には脛骨の回旋で半月板を後方へ誘導し、伸展制限には後方関節包を緩める
  4. 内側半月板の逸脱(MME)と、MCLの部位(zone 3)の関係

考え方と手技は、小野志操先生(理学療法士)が半月板の操作を実演している動画(運動と医学の出版社 2026)を参考にしています。研究で確かめられていることと、動画で語られている臨床の考え方は、分けて書きます。

対象読者: 理学療法士・アスレティックトレーナーなど、膝の可動域制限を扱う専門職 注意事項: 半月板損傷(とくに不安定な断裂やロッキング)、術後早期の方では、手技の適否を主治医と確認してください。


半月板は、曲げ伸ばしで前後に動く

研究対象・方法結果
Vediら(1999)若いサッカー選手16名。オープンMRIで、荷重下に伸展位から90°屈曲まで内側半月板は前節が7.1mm、後節が3.9mm動いた。外側半月板は前節が9.5mm、後節が5.6mm
Chenら(2014)健常者30名。MRIで0〜40°屈曲すると、内側・外側とも後方へ動いた。外側のほうが、前節のほうが大きく動いた。脛骨は屈曲で約12°内旋し、伸展で同じだけ外旋した

ポイントは3つです。

  • 屈曲で後方へ、伸展で前方へ動く
  • 外側半月板のほうが大きく動く
  • 曲げ伸ばしには、脛骨の回旋がついてくる

半月板は、関節包を介して大腿骨と脛骨につながる

内側半月板の5つのzone

内側半月板は、付着のしかたで前から後ろへ5つに分けられます(Śmigielskiら 2015)。

zone部位
1前根
2前内側
3内側(MCLの部位)
4後方(後節)
5後根

zone 3は、深層MCLで大腿骨と脛骨の両方につながる

zone 3の内側半月板は、深層MCLにつながっています。深層MCLは、半月大腿靭帯(大腿骨側)と半月脛骨靭帯(脛骨側)の2つの部分でできています(LaPradeら 2007)。深層MCLは関節包が厚くなった部分です。

つまり、半月板は関節包を介して、大腿骨側にも、脛骨側にもつながっています。どちらかが硬くなれば、半月板の動きは制限されます。

屍体研究でも、脛骨を外旋させたときに、屈曲初期(0〜30°)の内側半月板の動きが制限されました。著者らは、その原因として半月板に付着する関節包、または大腿骨顆部の可能性を挙げています(Tienenら 2005)。

関節包が、半月板を誘導している

小野先生は動画で、半月脛骨靭帯や半月大腿靭帯も関節包の一部としてとらえ、関節包が半月板を誘導していると説明しています。

  • 曲げるときは、関節包が伸びる分だけ、大腿骨顆部の動きで半月板が後方へ行く
  • 伸ばすときは、大腿四頭筋の収縮で関節包が引かれ、半月板が前方へ戻る

だから、半月板を無理に押すのではなく、関節包の動きを出すことを先に行います。関節包は膝を1周しているので、症状が内側にあっても、外側を含めて全体を緩める、という進め方です。

【私見】 私もこの考え方で、内側も外側も、大腿骨側も脛骨側も、関節包の柔軟性を確認しています。

【要文献確認】 関節包の伸びで半月板の動きが決まる、という説明は、動画で語られている臨床の考え方です。直接確かめた研究は、私が調べた範囲では見つかっていません。


屈曲制限:脛骨の回旋で、半月板を後方へ誘導する

根拠:外旋で内側が、内旋で外側が後方へ動く

健常者31名で、膝20°屈曲位のまま脛骨に回旋の力(5Nm)をかけ、MRIで半月板の動きを測った研究があります(Fuchsら 2022)。

脛骨の回旋内側半月板外側半月板
外旋後外側へ 6.01mm前内側へ 3.58mm
内旋前外側へ 1.79mm後内側へ 4.55mm

内側半月板を後方へ動かしたいなら脛骨を外旋、外側半月板なら内旋です。屍体研究でも、脛骨を外旋させると内側半月板の通り道が後方へ、内旋させると前方へずれました(Tienenら 2005)。

評価:脛骨を回旋させて、半月板が後方へ動くか

膝を90°前後曲げた位置で、関節裂隙に指を当てたまま脛骨を回旋させます。内旋で外側半月板が、外旋で内側半月板が後方へ動くかを、触って確かめます。動きの悪いところに軽く圧を加えて、普段の痛みが再現されるかも見ます。

やり方(小野先生の動画の手順)

  1. 膝蓋下脂肪体を動かします。関節包とつながっているためです。膝蓋腱の脇から指を入れます
  2. 関節包を動かします。関節裂隙から1横指半ほど離れたところで、前方・内側・外側を触ります。次に、軽く曲げて前方の関節包に少し張りをかけた状態で、同じ操作をします
  3. 関節裂隙に触れたまま、脛骨の内旋に合わせて外側半月板が、外旋に合わせて内側半月板が後方へ動くのを助けます
  4. 力はごく軽くします。半月板を押し込むのではなく、関節面の周りをなでるくらいの力です

【要文献確認】 Fuchsらが測ったのは膝20°屈曲位での動きです。深い屈曲で、この誘導が半月板を後方へ動かし、屈曲可動域を改善するかを確かめた研究は、私が調べた範囲では見つかっていません。


伸展制限:後方関節包を緩める

根拠:伸展制限と関連したのは、内側の後方関節包の硬さ

内側型の膝OAの女性66名で、腹臥位・膝15°屈曲位の組織の硬さを、超音波(せん断波エラストグラフィ)で測った研究があります(Okadaら 2025)。

  • 伸展制限と関連したのは、内側の後方関節包の硬さでした
  • 外側の後方関節包、MCL、膝窩筋、大腿二頭筋短頭の硬さとは関連がありませんでした
  • 腓腹筋内側頭の近位部の硬さとも関連がありました

膝OAで屈曲拘縮がある人の後方関節包を調べた研究では、膠原線維が多く、脂肪や滑膜の組織が少ない傾向がありました。ただし、有意差はありませんでした(Campbellら 2015、拘縮あり9名、なし6名)。

伸展するとき、半月板は前方へ動き、脛骨は外旋します(Chenら 2014)。後方の関節包が硬いと、この両方が止められます。

やり方(小野先生の動画の手順)

  1. 後方の関節包を、大腿骨側から動かします。大腿骨顆部の上側にある関節包を、すくい上げるように扱います
  2. 次に脛骨側です。内側では、半膜様筋の direct arm(脛骨へ直接付く部分)が硬くなっていることが多いので、そこを軽く動かします
  3. 関節包が緩んできたら、伸展させながら、後方から前方へ半月板を送ります。内側なら、半膜様筋の direct arm を前方へ押すイメージです
  4. 最後に、後方の線維を軽く伸ばします

後方の関節包への操作は、前方・内側・外側より痛みが出やすいので、とても弱い力で行います。

【要文献確認】 Okadaらの研究で伸展制限と関連したのは内側の後方関節包でしたが、動画の例では、後方は外側のほうが硬かったと話されています。触って硬いほうから扱ってください。この手順の効果を確かめた研究は、私が調べた範囲では見つかっていません。


内側半月板の逸脱(MME)と zone 3

MMEは、荷重したときに測ると意味がある

  • 地域在住の女性43名で、立位で測った逸脱量は、初期の膝OAの人のほうが大きく(4.5mm 対 3.1mm)、膝の機能の自己評価とも関連していました。背臥位で測った値より、初期の膝OAをよく見分けました(Yagiら 2026)。測った場所はMCLの下、つまりzone 3です
  • 膝OAの32名で、歩行中の逸脱量の変化は歩行時の痛みと相関しました。止まった姿勢での変化は相関しませんでした(Ishiiら 2023)

研究で多いのは「ゆるんで逸脱する」方向

研究内容
Gilatら(2023)システマティックレビュー。屍体で半月脛骨靭帯を切ると、約3mm逸脱し、修復すると約2mm戻った
Andersonら(2025)屍体15組。半月脛骨靭帯が欠損すると、逸脱が増え、後根にかかる力も増えた

半月板を脛骨につなぎ止める靭帯がゆるむ・切れると逸脱する、という方向の研究が中心です。

仮説:zone 3の硬さに引っ張られる

一方で、硬さの側を示唆する所見もあります。346膝のMRIを調べた研究で、深層MCLの下にある前内側の関節包と大腿骨をつなぐ帯(capsulofemoral band)が、逸脱のある膝で厚くなっていました(Aydıngözら 2016)。

小野先生も動画で、zone 3が硬い人は多いと話しています。逸脱の理由として、内側にかかる圧で押し出されるという説明のほかに、周りを包む組織が硬いところに圧がかかるため、外へ持っていかれる可能性を挙げています。本人も、臨床の一理学療法士がこれを証明するのは難しいと述べています。

【私見】 私もこの考え方で、zone 3の関節包の柔軟性を、大腿骨側と脛骨側の両方で確認しています。

【要文献確認】 ただし、Aydıngözらの研究は1時点の比較で、帯が厚いから逸脱したのか、逸脱したから厚くなったのかは分かりません。zone 3の柔軟性を改善すると逸脱が減ることを確かめた研究も、私が調べた範囲では見つかっていません。現時点では仮説として扱ってください。


まとめ

ポイント内容
半月板の動き屈曲で後方へ、伸展で前方へ。外側のほうが大きく動く
関節包とのつながりzone 3は、深層MCLで大腿骨側にも脛骨側にもつながる
進め方半月板を押すのではなく、まず関節包の動きを出す(小野先生の動画)
屈曲制限脛骨外旋で内側半月板、内旋で外側半月板を後方へ誘導する
伸展制限後方関節包を大腿骨側→脛骨側の順に緩め、伸展しながら半月板を前方へ送る
MME研究の中心は「ゆるんで逸脱」。zone 3の硬さで引っ張られる説は仮説

参考文献

Anderson, M. J. J., Hollenbeck, J. F. M., Drumm, A. H., et al. (2025). Medial meniscotibial ligament deficiency increases medial meniscus extrusion and posterior root forces. The American Journal of Sports Medicine, 53(3), 666–672. doi:10.1177/03635465241309671

Aydıngöz, Ü., Demirhan, M., Gümüş, T., Erçakmak, B., Beşer, C. G., Kösemehmetoğlu, K., & Demiryürek, D. (2016). Association of medial meniscus extrusion with the prominence of a fascicular capsulofemoral band subjacent to the deep medial collateral ligament. American Journal of Roentgenology, 206(4), 810–816. doi:10.2214/AJR.15.15252

Campbell, T. M., Trudel, G., & Laneuville, O. (2015). Knee flexion contractures in patients with osteoarthritis: clinical features and histologic characterization of the posterior capsule. PM&R, 7(5), 466–473. doi:10.1016/j.pmrj.2014.12.001

Chen, H. N., Yang, K., Dong, Q. R., & Wang, Y. (2014). Assessment of tibial rotation and meniscal movement using kinematic magnetic resonance imaging. Journal of Orthopaedic Surgery and Research, 9, 65. doi:10.1186/s13018-014-0065-8

Fuchs, A., Georgii, J., Taghizadeh, E., et al. (2022). In-vivo assessment of meniscal movement in the knee joint during internal and external rotation under load. Journal of Experimental Orthopaedics, 9(1), 102. doi:10.1186/s40634-022-00540-5

Gilat, R., Mitchnik, I. Y., Mimouni, T., Agar, G., Lindner, D., & Beer, Y. (2023). The meniscotibial ligament role in meniscal extrusion: a systematic review and meta-analysis. Archives of Orthopaedic and Trauma Surgery, 143(9), 5777–5786. doi:10.1007/s00402-023-04934-7

Ishii, Y., Ishikawa, M., Nakashima, Y., et al. (2023). Dynamic ultrasound reveals the specific behavior of the medial meniscus extrusion in patients with knee osteoarthritis. BMC Musculoskeletal Disorders, 24(1), 272. doi:10.1186/s12891-023-06361-6

LaPrade, R. F., Engebretsen, A. H., Ly, T. V., Johansen, S., Wentorf, F. A., & Engebretsen, L. (2007). The anatomy of the medial part of the knee. The Journal of Bone and Joint Surgery. American Volume, 89(9), 2000–2010. doi:10.2106/JBJS.F.01176

Okada, S., Yagi, M., Taniguchi, M., et al. (2025). Investigation of the relationship between soft tissue stiffness and maximum knee extension angle in patients with knee osteoarthritis. Journal of Biomechanics, 182, 112582. doi:10.1016/j.jbiomech.2025.112582

Śmigielski, R., Becker, R., Zdanowicz, U., & Ciszek, B. (2015). Medial meniscus anatomy—from basic science to treatment. Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy, 23(1), 8–14. doi:10.1007/s00167-014-3476-5

Tienen, T. G., Buma, P., Scholten, J. G., van Kampen, A., Veth, R. P., & Verdonschot, N. (2005). Displacement of the medial meniscus within the passive motion characteristics of the human knee joint: an RSA study in human cadaver knees. Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy, 13(4), 287–292. doi:10.1007/s00167-004-0511-y

Vedi, V., Williams, A., Tennant, S. J., Spouse, E., Hunt, D. M., & Gedroyc, W. M. (1999). Meniscal movement. An in-vivo study using dynamic MRI. The Journal of Bone and Joint Surgery. British Volume, 81(1), 37–41. doi:10.1302/0301-620x.81b1.8928

Yagi, M., Taniguchi, M., Iwane, K., et al. (2026). Medial meniscus extrusion during weight-bearing in early-stage knee osteoarthritis. Annals of Biomedical Engineering. Advance online publication. doi:10.1007/s10439-026-04271-x

以下は査読を受けた論文ではなく、動画です。

運動と医学の出版社. (2026, October 29). 【できますか?】半月板が動くことで膝関節は変わる、変えられる【理学療法士/小野志操】 [Video]. YouTube. https://www.youtube.com/watch?v=zYjhZMxxyoU


注意事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医療行為や診断・治療の代替ではありません。

痛み・しびれ・炎症・外傷などの症状がある方、医師から運動制限を指示されている方は、実施前に必ず医師または理学療法士にご相談ください。実施中に体調の異変を感じた場合は直ちに中止し、医療機関を受診してください。


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